北本市史 通史編 自然

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第4章 北本の気候

第4節 天気俚諺

1 「その土地の地域名のある天気俚諺」五八例

市域から見える山は富士山、秩父連山、浅間山、榛名山(はるなさん)、赤城山、男体山、筑波山(つくばさん)などである。このうち天気俚諺にあげられた山とその方向は、富士山(南西)、秩父連山(西)、浅間山(西北西)、赤城山(北北西)である。地名のある天気俚諺でもっとも多かったのは「富士先三束(ば)」で、これは富士山の方向(南西)に雲がかかると麦束(たば)を三束たばねるうちに雷雲がくるという意味で、風が吹く、という内容もいれると二〇例あった。富士山にかかる雲といっても気象条件によって雲のタイプは異なるが、麦刈りのころに富士山にかかる雲は低気圧性の強風が吹いていることを意味している。低気圧は東進するから富士山の東に位置する市域ではまもなく雨や風となるのである。
また「秩父がみえれば天気はよくなる」という天気俚諺も多い(一〇例)。西の山が見えるということは、西の空に層雲(そううん)のような低い雲がないということであり、高気圧の前面や西高東低の冬型気圧配置で、天気は晴れるということであろう。「浅間山に朝雲がかかると北風が出る」は西北西の山に雲がかかる、あるいは煙で見えない時は、冬型の気圧配置が強まりすでに山では冬の季節風が強く吹いて、市域でも北風が吹く前兆であるということを述べているのである。
富士先三束
富士が雲傘をかふると風がふく
富士の空鳴り雨降らず
富士オロシは大雨だ
虹が富士にかかると大雨になる
富士がくっきり見えれば天気が続く
西の山(秩父連山)が見えればお天気はよくなる
秩父の山に雲がかかると翌日は風が吹く
秩父方面から出る雷雲は「麦束三束」といって早く来る
秩父の方に雲がどんどん行く時は荒川大洪水
浅間山に朝雲がかかっていると北風が出る
春に山が見えると降り
荒川沿岸は霜が少ない
春と夏に東の空に入道雲が出ると近いうちに大雨
夏、雲が北東に行くときは利根川大洪水となる
日光の空鳴り
晩秋から冬にかけて赤城山がくっきり見えると強い西風となる
朝、高崎線の汽車の音が良く聞える時、明日も天気がよい
天気の境界線が利根水路上にある
松の移植は西山に雪があるうちに
榛名神社のお札を畑に立てると嵐除けになる
旱魃(かんばつ)の時、群馬県板倉神社で雨乞いをすると雨が降る

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