北本市史 通史編 自然

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第6章 北本の生物

第5節 優れた自然

2 蓮沼付近

写真38 蓮沼

蓮沼は荒川の旧流路で長さ約七五〇メートル、幅約五四メ ートルの三日月湖である。現在、流入する川はなく、流水系は閉鎖されている。南側の下方は溝となって、荒川に注いでいる。水位は年間を通してほぼー定であり、農薬・家庭雑排水の影響はなく、自然環境のよい沼である。
沼の水面には、春から夏にかけて、オニビシ・ヒメビシ・ヒシが繁り、沼岸ではヨシ、ガマ、マコモなどの水生植物が生育する。冬になるとこれらの植物が枯れた状態となる。したがって、夏には水生植物によって蓮沼の水温が調整され、冬には水底まで光が入り、生物のはたらきによって、沼が一年間を通して常に自然に浄化される状態にある。
爬(は)虫類ではクサガメが多数生息し、自然増殖している。両生類ではトウキョウダルマガエルとウシガエルが生息する。ウシガエルの幼生が多数見られるのは、幼生で冬を越し、二度の夏を経て変態(へんたい)して、カエルに成長するためである。魚類ではヘラブナ、コイ、ウナギ、ナマズ、タイリクバラタナゴ、モツゴが多数生息する。最近、カムルチー、オオクチバスが増えてきている。カムルチーは、つがいで水草などで巣を作り、卵や仔魚を守る習性がある。
水生昆虫では水面上にエサキアメンボ、ハネナシアメンボなどが生活し、ヨシ・ガマなどの間やヒシの下にミヤケミズムシ、コバンムシ、ミズカマキリなどの半翅目(はんしもく)、ゲンゴロウ科のマメゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ツブゲンゴロウ、ゴマダラチビゲンゴロウ、シマゲンゴロウなどが生活する。岸辺の沼底にはクロイトトンボ、ギンヤンマ、シオカラトンボなどのトンボ目、セグロトビケラ、 アオヒゲナガトビケラなどのトビケラ目が生活する。また、 沼は埼玉県で唯一(ゆいいつ)のコバンムシの生息地でもある。
甲殻類(こうかくるい)ではヌカエビが岸辺の水草の間に多数生息する。アメリカザリガニもヨシやガマの間に生息する。
オオタ二シ、ドブガイ、カラスガイ、マツカサガイなどの軟体動物も蓮沼に生息する。
蓮沼には多数の植物、動物が繁殖し、しかもエサキアメンボ、コバンムシ、セグロトビケラなどの珍しい水生動物が今も生息している。このことは、蓮沼の水温、水質、水量、水深、沼底相などの水質環境要素が適切に具備され、ほとんど昔のままの生息環境が保たれてきたからである。

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