北本市史 通史編 原始

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第2章 豊かな自然と共に

第2節 時期区分と土器の変遷

一万年も続いた縄文時代
縄文時代がいつごろ始まり、いつごろ終わったかということに関しては、考古学的方法によるものと、物理学的測定による方法がある。考古学的方法は相対年代といって、日本で出土する文物の新旧の序列をつくり、大陸で出土し年代が推定されている文物と比較し、日本の年代を推定する方法である。物理学的測定方法には放射性炭素測定(ほうしゃせいたんそそくてい)、黒耀石水和層測定(こくようせきすいわそくてい)、地磁気測定(ちじきそくてい)などいくつかの方法があるが、たくさんのデータが揃(そろ)っている放射性炭素測定値が一般的に使用されている。放射性炭素は、上層気流の中の窒素(ちっそ)と宇宙線との作用によつて、二酸化炭素と結合してつねに空気中に存在している。質量数が一四であり、<14C>と表記する。動植物は生きているあいだは、つねにこの放射性炭素14Cの吸収と分解をつづけ、体組織のうちに一定の含有量を保っている。そして生物が死ぬと放射性炭素14Cの吸収作用はとまり、分解作用だけがおこなわれる。この分解され、減少していく速度は、どの生物でも一定している。つまり、生命を失ってから、最初の五五六三±三〇年間に、生前保有していた半分が消滅し、残量のさらに半分はつぎの五五六三±三〇年かかってなくなる。そのまた残りの半分が分解してしまうにも、同じ年数がかかる。このような経過で、放射性炭素14Cは生命を失った生物の組織から消えてゆく。これは地球上のどこに住んでいるどんな生物でも同じであるといわれている。遺跡から出てくる木や貝殻や木炭などに14Cがどれくらい残っているかを測定し、半減の速度計算を適用すれば、その生物が死んでからどのくらい年代が経ているかがわかるのである。日本で一番古い土器と一緒に出土した炭化木材の放射性炭素HCを測定したところ、B・Cー〇、五一五±六〇〇年と出た。この数値は世界で最古の土器であることを示している。B・C三〇〇年ごろに弥生時代に移行するから、縄文時代はおよそー万年間続いたのである。

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