北本市史 通史編 近世
第3章 農村の変貌と支配の強化
第8節 生活と文化
1 北本市域の寺院と神社
朱印状深井の寿命院には、家康の発給した朱印状をはじめとして、全部でーー通の朱印状がある。家康の朱院状は写真25の通りで、天正十九年(一五九一)のものである。「寄進 寿命院 武蔵国足立郡鴻巣郷之内拾石の事 右寄附せしめおわんぬ。殊に寺中に不入たるべき者なり。よって件のごとし。天正十九年辛卯十一月日」という内容である。天正十九年という年は家康の関東入国の翌年に当る。家康はこのように寺領を寄進し、「寺中不入たるべきものなり」と寺中を除地=免税地として保護し、寺の幕府への従属性を促し、寺院を支配機構の中に組みこんでいった。
写真25 徳川家康朱印状天正19年
(深井 寿命院蔵)
寿命院には、この家康の朱印状のほかー〇通の朱印状が存在している。本来、朱印状は最初に受けた時点から将軍の代替わりごとに新しい朱印状が交付されたが、これらは継目安堵と呼ばれている。
しかし、歴代の将軍中在職期間の短かった六代目家宣、七代目家継、一五代目慶喜はこの継目安堵の朱印状を発給していないので、家康から朱印状を受けた寺でも実際に交付されたのはー二通である。なお、県下における朱印寺社は、寺院三六四、神社八四、合計四四八社で時代別、宗派別朱印寺社数は表41の通りである(『県史通史編三』P七九三)。
表41 時代別・宗派別朱印寺社数
宗派 時期 | 天台宗 | 真言宗 | 浄土宗 | 時宗 | 曹洞宗 | 臨済宗 | 日連宗 | 修験 | 寺院計 | 神社 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
天正19年 | 8 | 30 | 8 | 0 | 33 | 9 | 3 | 3 | 94 | 18 | 112 |
慶長期 | 1 | 4 | 6 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 16 | 3 | 19 |
元和6年 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
寛永19年 | 0 | 3 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 9 | 1 | 10 |
慶安元年 | 1 | 35 | 7 | 0 | 15 | 2 | 3 | 4 | 67 | 7 | 74 |
慶安2年 | 13 | 65 | 12 | 4 | 47 | 13 | 2 | 4 | 160 | 47 | 207 |
慶安年中 | 0 | 4 | 2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 9 | 6 | 15 |
貞享2年 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 4 |
不 明 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 4 | 2 | 6 |
合 計 | 24 | 145 | 37 | 4 | 110 | 25 | 8 | 11 | 364 | 84 | 448 |
(『県史通史編3』P793より引用)