北本市史 通史編 現代

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第1章 戦後復興期の北本

第7節 民主化される教育

2 教育制度の民主化

アメリカ教育使節団の報告
現在の学校教育に関して中核となっている法律は、教育基本法と学校教育法である。二法とも昭和二十二年三月三十一日制定されたものである。ここではその制定過程についてふりかえり、教育の民主化の動きをおってみたい。
GHQによる日本の教育内容の民主化のための措匱はすでにふれたような経過で行なわれてきたが、同時に、教育制度の民主化政策も実施の準備がすすめられていた。GHQで教育問題を担当していた民間情報教育局(CIE)の派遣(はけん)要請により、昭和二十一年三月五日、「アメリカ教育使節団(以下使節団)」二七名が来日した。来日の主な目的は日本に民主主義教育を徹底させるためであった。日本側でも使節団と協議するための委員会である「日本教育家の委員会」がGHQの指示に基づいて発足していた。使節団は来日一か月も経ない三月三十日、「第一次アメリカ教育使節団報告書」を提出した。初等・中等教育、高等教育、成人教育、学制改革、教育行政、国語改革など多岐(たき)にわたる報告は、日本の戦後教育の基本方針となるものであった。その一部を抜すいしてみよう。序論には報告の目的が次のように記されている。
アメリカ教育使節団報告書
  序論
しかし、我々の最大の希望は子供にある。事実彼等は将来といふ重荷を担ってゐるのであるから、重い過去の遺産に押しつぶされてはならないのである。そこで我々は、誤った教授をやめるだけではなく、子供達の心情を硬化させることなくその心を啓発するやうに、教師と学校とを準備して、できる限り公平に機会を与へてやりたいと思ってゐる。

初等及中等学校の教育行政については、次のように報告されている。
アメリカ教育使節団報告書
  初等及中等学校の教育行政
教育の民主化の目的のために、学校管理を現在の如く中央集権的なものよりむしろ地方分権的なものにすべきであるといふ原則は、人の認めるところである。学校における勅語(ちょくご)の朗読、御真影(ごしんえい)の崇拝等の式を挙げることは望ましくない。文部省は、本使節団の提案によれば、各種課税で維持し、男女共学制を採り、かつ授業料無徴収の学校における義務教育の引上げをなし、修業年限を九ケ年に延長、換言すれば生徒が十六歳に達するまで教育を施す、年限延長改革案を我々は提案する。更に生徒は、最初の六ヶ年は現在と同様小学校において、次の三ケ年は、現在小学校の卒業児童を入学資格とする各種の学校の合併改変によって創設されるべき「初級中等学校」において、修学することを我々は提案する。

昭和二十一年八月、「日本教育家の委員会」が母体となって「教育刷新(さっしん)委員会」が設けられた。教育刷新委員会は首相に教育に関する建議を行う権限を有しており、使節団の報告書と教育刷新委員会の建議が日本の教育制度の改革をもたらす原動力となっていくのである。

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