北本市史 通史編 現代

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第2章 都市化から安定成長へ

第2節 北本市の発足と市政の展開

2 市政の展開

すすむ行政改革
昭和五十六年三月、政府は第二次臨時行政調査会を発足させ、戦後三回目の大規模な行政改革を開始した。
注 第一回はドッジライン実施による経費節約と人員の大幅整理を伴った昭和二十年代の行政改革、第二回は昭和三十九年、第一臨調(りんちょう)により中央省庁の部局整理など四十項目が答申されたが、完全実施はーー項目にとどまった。
昭和五十七年第二臨調が第一次答申を行うと、埼玉県及び県下各市町村も、一斉に地方行革に着手した。この時、北本市において行った改革は、次のような諸事項であった。
1 事務事業
催(祭)事の統合、公務出張の改善、補助金の削減など財政支出の抑制
2 組織・機構
市長部局の合理化(三部ニ十ニ課五十三係を四部十六課二担当四十九係に再編)など
3 給与
初任給の引き下げ、諸手当の見直しなど
4 定員管理
五十七・五十八年度の新規採用中止
5 民問委託・OA化
し尿・ごみ収集、学校警備、公共施設の警備、清掃・設備運転、学校給食の調理・運搬、側溝清掃を民間に委託
財務会計、課税などの電算化、窓口事務などのオンライン化
6 公共施設の管理
民間団体へ委託

(「北本市行政改革大綱」より)


以上は昭和五十六~五十九年における措置(そち)事項であるが、昭和六十年になると「地方行革元年」と称され、自治省—埼玉県を通じて強い行政指導が加わってきた。すなわち自治省通逹で始まり、その進捗(しんちょく)状況について三度、さらに実施結果について詳細(しょうさい)な報告を求められたことをみれば、行政指導とはいえ上からの強制に等しいものだったといえよう。
こうした動きに対応するため、市では昭和六十年七月北本市行政改革推進本部設置要綱を定め、同時に、市長が委嘱(いしょく)した任期二年、十五人の委員から成る行政改革推進委員会を設置し、新たな検討課題について諮問(しもん)した。同年八月同委員会答申、これを基に同年十月北本市行政改革大綱が策定され(『広報きたもと』No.四〇八)、市長名をもって次のように各部局課長に示逹(じたつ)された。
(前略)昭和五十六年十一月に北本市行財政改革推進会議を設置し、独自に給与及び定員管理の適正化、事務事業の見直し、組織機構の簡素化・合理化等の行政改革に取り組んできたところであります。しかしながら先般国の指導に基づき、市民からの意見・提言を受けながら、引き続き行政改革を進めていくため、去る七月に北本市行政改革推進委員会を設置し、北本市の行財政改革について諮問したところ、委員各位の慎重審議の結果、「北本市行財政改革に関する答申」が示されました。(中略)これを受けて(中略)検討した結果、昭和六十二年度までに実施すべき事項として、別紙2の北本市行政改革大綱(たいこう)を策定したので送付します。
<別紙>
行政改革大綱(注、主な措置事項のみ抜粋)
1 事務事業
使用料・手数料、報奨金(ほうしょうきん)(市税および下水道受益者負担金の納期前納付報奨金)、各種補助金(保育所保護者負担金を含む)の見直し
2 組織・機構(略)
3 給与
六等級制を七または八等級制に給料表を改定
4 定員管理
職員配置の再点検
5 民間委託・OA化
予算、決算、人事管理、工事設計積算などのシステム化、端末機(たんまつき)の増設
6 公共施設の管理 (「北本市行政改革大綱」より)
行政改革大綱にあげられた右の措置事項は、次のように実施された。
○ 昭和六十一年度 催(さい)(祭(さい))事(じ)の整理統合、給料表を八等級制に改定
○ 昭和六十二年度 人事管理・工事設計積算のシステム化
○ 昭和六十三年度 保育所保護者負担金・使用料・手数料の改定、行政機構の再点検、団体による公共施設管理連営方式の導入(コミュニティー推進協議会へコミュニティーセンタ—の管理運営の一部委託など)
○ 平成元年度 市税完納補助金の廃止
○ 平成二年度 市長部局を四部十六課から五部ニ十一課に再編、畜犬登録事務のシステム化、市税納期前納付報奨金の廃止、市議会議員の定数二名減

以上のように、予定年度を越えたが、当初の目標はほとんど実施された。しかしこのような内容の行革は、実は全国の市町村にほぼ共通のものであった。それは政府主導の行革であったために、経費削減が至上(しじょう)課題となったからである。すなわち当時は低成長期で、政府歳入が伸びなやみ、石油危機以来累積(るいせき)した赤字公債(あかじこうさい)は昭和六十年には一〇〇兆円、一般会計からの利払いは、歳出の約二十パーセントにまで増大していたのである。そのため昭和五十六年を「財政再建元年」とし、「増税なき財政再建」のための行政改革だったのである。したがって政府歳出の削減に伴う地方交付金や補助金などの削減に耐え得るための改革が主眼となり、何よりも必要な機関委任事務の見直し、起債や補助金申請のための繁雑(はんざつ)な事務に要する経費、タテ割り行政に基づく無駄な経費等々の削減などについては、検討さえされることなく終わった。

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