北本市史 通史編 現代

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第2章 都市化から安定成長へ

第2節 北本市の発足と市政の展開

3 「緑に囲まれた北本市」づくり

北本中央緑地の保全
市では、自然と人間との調和の一環として平成四年、北本市内に唯一残るJR高崎線沿線の雑木林の買取りによる保全に乗り出している。都市化と共に失われてゆく傾向にあって、雜木林の残る意義は極めて大きいといえる。
武蔵野の面影を残し、貴重な都市緑地として市民に親しまれているこのような雜木林は、高崎線沿線では北本市内にしか残っていないのが現状である。計画では「高崎線沿線両側約一.三キロメートルをそれぞれ約二十メートル幅で緑地帯として整備する。散歩道を造る以外は手を加えず、自然のままで保全する」という画期的な内容である。
雜木林の保全については、狭山(さやま)市で「トトロのふるさとを残そう」をスローガンに、全国的規模で保全の機運が高まっている。
このような雜木林の保全の効用として
① 緑の中にいると精神的に和らぐ 、
② 騒音や光化学スモッグなど大気汚染を和らげる
③ 土、水、空気の浄化作用がある
などがあげられている。
また、自然教育の場、子供たちが自然と遊ぶ場、忙しい生活の中での潤いと安らぎの場等が創出され、人間の生活に恩恵をもたらすことも指摘されている。
北本市の雑木林は、昭和五十三年当時約一七八ヘクタールあったが、十年後には宅地化などで四十三パーセント減の一〇一.三ヘクタールに減少している。あと二十年もすれば雑木林は無くなってしまうのではという見方すらある。
しかし、保全には財源などまた重い課題もある。長期的に買収するとはいえ、保全整備すると全体で約六十二億もの買収費が必要になることから、起債(きさい)のうけられる特別対策事業などの適用を国に要請するなど、財源の手当を検討している。保全を決定した背景について、新井馨市長は「道路整備などと違いすぐに市民に還元されるものではないが人間が生きていくかぎり必要なもの。一度失ったら戻らない。広い意味で市民や県民が潤うことになる。」と、将来の環境を考えての決定だとして市民に理解を求めている。

写真44 高崎線沿線の雑木林の保全を伝える新聞記事

平成4年1月30日『埼玉新聞』

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