北本市史 資料編 自然

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第1章 北本の地形

はじめに
東西七・二キロメートル、南北約六キロメートルの中央部がややくびれた台形をなす北本市は、埼玉平野の北西部に位置している(図1)。従来、この地域は畑作・水田農業を中心とした静かな田園地帯の色彩が濃厚であったが、首都圏五〇キロメートルの距離にある利便性から次第に都市化の波が及び、近年では急激な人口増加とそれに伴う大型住宅団地の建設や宅地開発が進展し、台地の一部は削り取られ、開析谷にも埋めたてが行われ、ここ一~二年来自然地形の破壊と改変が著しく進んできた。このような状況は、今まさに北本市民に豊かな自然環境の保全と、その有効利用を問いかけている。

図1 関東平野中央部の地形区分と名称(堀口:1981に一部加筆)

図2 地形・地質調査地点位置図

●台地の露頭調査地点(数字は本文中の図番号を示す)
○地質推定断面図作成位置(図10)
△深井戸柱状図位置(図8・9)
ⓐ~ⓝ開析谷のハンドオーガーボーリング調査地点(図11№1~31) ⓐ…28、29 ⓑ…26、27 ⓒ…24、25 ⓓ…22、23 ⓔ…19、20、21 ⓕ…16、17、18 ⓖ…12、14、15 ⓗ…10、11、13 ⓘ…8、9 ⓙ…3、31 ⓚ…7、30 ⓛ…6 ⓜ…4、5 ⓜ…1、2 (数字は本文中の図番号を示す)

この課題の解決は、まず自然の姿を可能な限り正しく把握することから始められなければならない。そのために、野外調査を実施(図2)し、ボーリング資料を解析して自然地形を後節に詳述し、とどめることにした。後述の地形要素は、洪積台地と開析谷、沖積低地とであり、それぞれの地形の性格を反映して土地利用の相違も著しい。
市域の広い部分は大宮台地の北西端部にあたっている。この中で、西部の高尾、荒井付近の海抜三〇メートルの高位台地面は、大宮台地の最高所に位置し、台地形成が最も早くから行われてきた下末吉面である。
一方、台地を深く複雑に侵食し、樹枝状に入りくんだ谷地と呼ばれる開析谷は平坦な台地上に切れ込んで、明瞭な起伏を作り、豊かな自然環境を提供している。
台地を挟んで東西には、荒川・赤堀川の沖積低地が発達し豊かな水田地帯が展開している。市域北東部の深井、東部の古市場付近の沖積層下には、低位台地面(武蔵野面)が埋没し、関東造盆地運動による台地の傾動、そこへの沖積層の埋積、低地の形成等、複雑な地形形成過程が推察できる。
このように見てくると、狭い北本市域にも、洪積台地・開析谷・沖積低地等の異質な地形要素が混在し、実に変化に富んだ特徴的な地形が発達していることがよくわかる。

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