北本市史 資料編 自然

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 自然

第3章 北本の土壌

第2節 沖積低地の土壌

調査地点№5市内高尾宮岡
荒川の崖線に近い台地の谷沿いの谷地田で、現在は休耕田になっており、土壌層位はAg/Bgir/Mである(図9)。
図9 調査地点№5の土壌断面

土壌層位 土色 腐植 土性 構造 斑紋 記事 
Ag 暗灰 富む SiCLシルト質埴壌土   クズ状 糸状鉄 前のAgP 
Bgir 黒灰 有 SiCL 壁状 糸状鉄 スキ床不明、しまりがよい
黒 すこぶる富む  SiCLシルト質埴土 無 無 黒泥土 

土地利用 休耕田
地形 谷地田

Agは、かつての耕作土 (Apg)である。とくにスキ床層は認められないが、Bgir自体しまりのよい層相を示した。また、Bgirは可溶性アルミナが多く検出され、周辺台地から流亡した火山灰が谷地田に集積した可能性が高い。
地下水面が高く、地表より三五センチの深さにあった。そのためα—α´ジピリジル反応はすべての層位で検出され、還元下の環境と推定される。なお、谷は荒川沖積低地に開かれ、傾斜しているため地下水は停滞せず、常に流下していると思われる。そのため、地下水が高いにもかかわらず強還元下で生成されるグライ層(G)は認められない。これは谷地田水田土壌の特徴といえよう。最下部には植物遺体の分解が進んだ黒泥土(M)がある。
以上の土壌断面から、表面水型と地下水型との中間型の水田土壌と考えられる。
谷地田水田は、規模が小さいが常に台地より水が供給され、洪水のような災害の影響も少なく、安定した稲作の場所として古くから利用されてきた。ところが、最近市内の谷地田は休耕田が多くなり、その多くは産業廃棄物の捨て場所として利用されつつある。社会情勢の反映とはいえ、昔から食糧生産の場として大切に使用されてきた谷地田の機能が変質しつつあることは、きわめて残念なことといえよう。(表1)
表1 土壌の化学特性
 調査地点No.1
土壌層位 可溶性アルミナ 記 事 
アノレミノン法※ KF法 ※※ 
ⅠA115  +黒ボク土 
ⅠA3 20 ++黒ボク土 
ⅠBC 30 ++大里ローム 
ⅡA 20 ++埋没腐植土 
ⅡBC 30 ++立川ローム 
 調査地点No.2
土壌層位 可溶性アルミナ 記 事 
アノレミノン法※ KF法 ※※ 
ⅠA1〇 客土 
ⅠA12〇 — 客土 
ⅡA120 黒ボク土 
ⅡA320 黒ボク土 
ⅡBC 30 + + 大里ローム  
ⅢA 20 埋没腐植土 
ⅢBC 20 立川ローム  
 調査地点No.4
土壌層位 ※※
2価鉄の検出
α-α' ジピリジル 
可溶性アルミナ 記 事 
アノレミノン法※ KF法  ※※ 
A1gp + + Tr 耕作土 
A12 — 〇 — スキ床 
B1ir — Tr 鉄集積層 
B2mn 一 Tr マンガン集積層
 調査地点No.5
土壌層位 ※※
2価鉄の検出
α-α' ジピリジル反応
可溶性アルミナ 記 事 
アルミノン法※ KF法 ※※ 
Ag + + 休耕田のA屑 
Bgir 10 鉄斑紋集稍眉 
〇 — 火山灰由来? 
黒泥土 

※ Al2O3 mg/100g Tr わずかにあり + 富む
※※ - 反応なし  ++ すこぶる富む


参考文献
山崎晴雄「立川断層とその第四紀後期の運動」『第四紀研究』第一六巻四号(ー九七八)
町田洋・新井房夫「広域に分布する火山灰—姶良Tn火山灰の発見とその意義—」『科学』第四六巻六号(ー九七六)
堀口万吉・河原塚順司「大宮台地南部の大里ローム層について」『埼玉大学教養部紀要自然科学篇』第一五号(ー九七九)
関東ローム研究グルーブ『関東ローム その起源と性状』(ー九六五)築地書館
埼玉県土地対策課『土地分類基本調査鴻巣』(ー九七五)吉川國男「大宫台地のド口ツケ 客土農法」『埼玉民俗』第五号(ー九七五)
吉川國男「ドロツケ」荒川人文Ⅲ『荒川総合調査報告書四』(ー九八八)埼玉県
松井健・成瀬洋・黒部隆「立川ローム層中の暗色带(埋没土壌腐植層)の14C年代」『地球科学』(ー九六八)第二ニ巻一号

<< 前のページに戻る