北本市史 資料編 自然

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第5章 北本の水

第1節 河川

北本市域の大半は大宮台地の北部に位置するが、その西境を荒川が、北東境の一部を赤堀川が流れ、西端には荒川の低地、東端には元荒川の低地がある。低地の大部分は水田となっており、これと関連して谷田堀川や新谷田用水路などがある。市域内は著名な河川の貫流する状況にはなく、台地を浅く刻んだ小さな谷筋に水流をみる程度である。勝林水路(江川)、梅沢水路などと呼ばれる小河川(水路)がそれであり、現在これらは排水路化している。
北本市は昭和三十五年頃から急速に都市化の進展が認められ、それに伴いかなりの農地や平地林が宅地や工場用地となっている。こうした状況に伴い、家庭や工場などから排出される人為的な排水を市域内の小河川や水路が負担している。したがって、河川水域などの水質の保全をはかるために、河川の環境基準(昭和四十六年十二月二十八日、環境庁告示)が設定されたり(表2)、公共下水道事業の推進がなされており、水域の浄化が当面の課題となっている。
一方、市南西部の石戸宿地区周辺は、埼玉県営北本自然観察公園としての計画が進められている。この計画の基本方針は、「都市近郊における恵まれた自然環境を保全育成し、その中で自然と人との楽しいふれあいを求め、自然とともに遊び、憩い、そして学ぶ場とする」という主旨で、公園の計画面積は約三二.九ヘクタールである。この地区は、台地とそれを開析した樹枝状の谷地から成り、台地上には畑・果樹園などが多く、谷地部は水田・ヨシ原など、台地斜面は雑木林が多くみられている。
ある地域を公園や緑地として保全していく場合には、その周辺地域で宅地開発などの進展に伴い難浸透域が増加したり、土木工事などにより地下水の水みちが遮断されたりして、地下水の水位低下や涸渇化、さらに湧水や河川の維持水量の減少化が顕著に表われる傾向が予想される。このように都市域の拡大は土地自然のもつ浸透・保水・貯留機能効果を著しく減少させるばかりでなく、必要な水量が確保できない環境にしてしまう。そのため自然環境の維持・回復に必要な水の確保についての基礎的研究が重要な課題となる。
したがって、基本的には土と豊かな緑に清流をリンクさせた環境を十分確保していくことが緊要であり、同時に小動物などの生息の場が維持できる自然的環境へつながる。この場合、水量の確保のみでなく、水質面についても十分な配慮をおこなうことが期待される。
表2 生活環境の保全に関する環境基準(湖沼を除く)
 項目

類型
利用目的の適応性 基準値
水素イオン濃度(pH)  生物化学的酸素要求量(BOD)浮遊物質量(SS)溶存酸素量(DO) 大腸菌群数 
AA 水道1級、自然環境保全及びA以下の欄に掲げるもの   6.5以上
8.5以下 
1mg/ℓ以下25mg/ℓ以下7.5mg/ℓ以上50MPN/100㎖以下
水道2級、水産1級、水浴、及びB以下の欄に掲げるもの 6.5以上
8.5以下
2mg/ℓ以下25mg/ℓ以下7.5mg/ℓ以上1000MPN/100㎖以下
水道3級、水産2級、及びC以下の欄に掲げるもの  6.5以上
8.5以下
3mg/ℓ以下25mg/ℓ以下5mg/ℓ以上5.000MPN/ 100㎖以下
水産3級、工業用水1級、及びD以下の欄に掲げるもの  6.5以上
8.5以下
5mg/ℓ以下50mg/ℓ以下5mg/ℓ以上— 
工業用水2級、農業用水、及びEの欄に揚げるもの   6.0以上
8.5以下
8mg/ℓ以下100mg/ℓ以下2mg/ℓ以上— 
工業用水3級、環境保全6.0以上
8.5以下
10mg/ℓ以下ごみ等の浮遊が認められないこと 2mg/ℓ以上— 
達成期間イ 直ちに達成   ロ 5年以内で可及的すみやかに逹成 
ハ 5年を越える期間で可及的すみやかに達成
該当水域 全公共用水域のうちの指定水域 

(注)

  1. 自然環境保全:自然探勝等の環境保全
  2. 水道 1級:ろ過等による簡易な浄水操作を行うもの
      〃  2級:沈澱ろ過等による通常の浄水操作を行うもの
      〃  3級:前処理等を伴う高度の浄水操作を行うもの
  3. 水産 1級:ヤマメ、イワナ等貧腐水性水域の水産生物用並びに水産2級及び水産3級の水産生物用
      〃  2級:サケ科魚類及びアユ等貧腐水性水域の水産生物用及び水産3級の水産生物用
      〃  3級:コイ、フナ等、β—中腐水性水域の水産生物用
  4. 工業用水1級:沈澱等による通常の浄水操作を行うもの
         〃    2級:薬品注入等による高度の浄水操作を行うもの
         〃    3級:特殊の浄水操作を行うもの
  5. 環境保全:国民の日常生活(沿岸の遊歩を含む)において不快感を生じない限度

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