北本市史 資料編 自然

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第7章 北本の動物

第2節 北本の水生動物

4 水生昆虫

主な水生昆虫の生息地別解説
①荒川の水生昆虫
夏季の荒川は、水量が多く、流速も速い。水生昆虫・は、川岸の水草の間やテトラポットの表面・テトラポッ卜の間に多い。冬季は水量が少ないが流速は速く、所々に礫床となっており、水生昆虫は礫の表面や礫と礫との空間に多く生息している。
北本市には、カゲロウ目一五種が生息し、そのうちの一三種が荒川に生息している。
オオフタオカゲロウ(写真10参照)は荒川の中流域を主に生活しているが、下流域の北本市まで分布を広げている。五月頃羽化し、羽化するとき淀みに多数集まる。昭和十八年頃、秋ヶ瀬にも生息していたが、現在は北本市が生息の最下流域である。この虫を釣り餌として利用する釣り人も多く、大阪の方では「ピンピン」と呼び、釣具店で釣餌として販売されている。
チラカゲロウは中流域を代表するカゲロウで、全体がチョコレート色で頭部から尾部まで中央部に白線が入っている。渓流の石の上にも生活している。
ナミヒラタカゲロウ、サツキヒメヒラタカゲロウは荒川の上流域・中流域で生活するカゲロウである。
シロタ二ガワカゲロウ(写真9参照)は秩父の川又から北本市まで分布し、水質の多少汚れた河川にも生きられるカゲロウである。年二世代のため、幼虫は年間を通して水中で見られ、個体数も多い。
マダラカゲロウ科はオオマダラカゲロウ、オオクママダラカゲロウ、コスタニアマダラカゲロウ、アカマダラカゲロウの四種が生息している。上記の三種は上流域から中流域にかけて生活するカゲロウである。北本市に生息するのは珍しい。これはこの辺りの荒川が礫床であり、流速が速く、水質がきれいだからである。
キイロカワカゲロウ(写真11参照)は中流域を代表するカゲロウである。集団で羽化する。昭和三十年代には秩父地方で多数が羽化し、死骸で車がスリップしたことがあった。北本市でも八月下旬頃に荒井橋の水銀灯で多数羽化しているのが観察された。
アミメカゲロウ(写真12参照)は下流域を代表するカゲロウである。この十数年来コンクリートブロックによる護岸工事の進展のため、岸の粘土層に穴を掘っての生活ができなくなり、また河川の汚濁も加わって個体数が激減した。しかし、昭和五十一年頃より水質環境がよくなり、再び見かけるようになった。キイロカワカゲロウと同様に八月頃集団羽化する。
トンボ目のダビドサナエ(写真14参照)は流速の速い砂床の中に生息している。本種は上・中流域の石礫床で主に生活する。北本市のように泥質床に生息するのは珍しい。
アメンボ(写真13参照)は流れを避け、水草の間やテトラポットの間の水面上で群れをなして生活している。つかまえて鼻に近付けると飴の臭いがする。
甲虫目は、ギベリマメゲンゴロウ、ゴマダラチビゲンゴロウ、キベリクロマメゲンゴロウなどが生息する。いずれも川岸の水草の間やテトラポットの間に生活し、個体数は多い。
オナガミズスマシは上流域または山地渓流までいかないと見られなくなったが、荒井橋付近の岸辺の水草の間では現在も生息している。
荒川にはナカハラシマトビケラ、ギフシマトビケラ、コガタシマトビケラ、エチゴシマトビケラの五種のシマトビケラ科が生息している。そのうち、ナカハラシマトビケラを除く四種が北本市で確認された。これら四種は従来、鴻巣が分布の最下流域であった。北本市まで分布が広がっていることになる。
体長四五ミリの大型のヒゲナガカワトビケラ(写真15・16参照)が北本市にも生息している。本種は礫に八個から九個の砂や小礫で粗末な筒巣を作り、巣の前に屋根状の捕獲網を張り、主に流下するソウ類をたべる。北本市では「川虫」と呼ばれている。荒井橋で成虫も採集されているのでこの付近に土着しているものとみてよい。
双翅目はガガンボとクロヒメガガンボが生息する。いずれも砂礫底部で生活する。

写真9 シロタニガワカゲロウの幼虫

写真10 オオフタオカゲロウの幼虫

写真11 キイロカワカゲロウの幼虫

写真12 アミメカゲロウ

写真13 アメンボ

写真14 ダビドサナエの幼虫


写真15 ヒゲナガカワトビゲラの幼虫

写真16 ヒゲナガカワトビゲラの成虫

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