北本市史 資料編 自然

全般 >> 北本市史 >> 資料編 >> 自然

第7章 北本の動物

第2節 北本の水生動物

5 甲殻類

主要な甲殻類の解説

写真19 ホウネンエビ

ホウネンエビ(写真19参照)は市内全域の水田に生息している。体長二〇ミリ、淡黄色の雌雄異体である。背を下にして、鰓脚を上にして独特な体形で泳ぐ。田植えのための引水後、約一~二週間でふ化し、ふ化後一週間で成体となる。寿命は約一週間位であり、六月から七月にかけて見られる。卵は風によっても運ばれ、庭先のくみ置きの水に発生することがある。水質変化に非常に弱く、特に農薬の投入で死滅する。外観がやや魚類に似ているので、「豊年魚」とも呼ばれている。
カブトエビは市内全域の水田に生息している。体長二五ミリ、背部は茶褐色の背甲でおおわれて、一見小型のカブトガニのようである。田植え後約二週間で発生し、二〇日間ぐらい生きている。発生時期は六月から七月でホウネンエビと混生することもある。食性は雑食性である。餌をとるときに水田の泥土をかき回し、水草を刈り取るため、「クサトリムシ」と呼ばれている。この習性を水田除草に利用しようという試みがある。実験的なものとして、松中氏(昭和五十四年)によると五〇センチ角の水槽で八〇匹のカブトエビにより、九九パーセントの除草効果であった。ミズムシは体長一センチ、灰褐色で淡色の斑紋がある。沼、溝、湧水に生息する。特に荒川に注ぐ湧水に多い。汚れた水域にも生息できる。個体数は多い。
ヨコエビは石戸宿九丁の湧水に生息する。水質がきれいで、年間を通して水温の変化があまりないところで生活する。
埼玉県内のエビの仲間はヌカエビ科のヌカエビ、テナガエビ科のテナガエビ・スジエビの三種が生息している。北本市内にも三種が確認された。
ヌカエビは体長三〇ミリ、エビ類のうちでは最小である。蓮沼の岸辺の水草の間に多数生息する。
テナガエビは体長八〇ミリ以上になる日本最大の淡水エビである。荒川の荒井橋付近に生息する。テトラポッ卜に土砂が堆積し、水流がゆるやかになった所で生活している。
スジエビは体長八センチ、透明で縞模様がある。第二胸脚は前方へのばすと、第二触角鱗片の末端を越えるが、テナガエビのように巨大ではない。荒川の岸辺で水草の間で生活している。
アメリカザリガニはザリガニ・エビガニとも呼ばれている。生息場所は市内の田・池沼・小川と広く、河床が泥でヨシや水草が生えているところである。特に八重塚、横田の休耕田に多い。泥質の浅い止水を好み、オタマジャクシ・ゲンゴロウ・ドジョウなどが生息するところに多い。本種はアメリカから大正七年に食用ガエルの餌として輸入されたものである。その後、著しく繁殖したが、最近では減少傾向にある。農薬による水質汚染と田が埋められ、生息地が狭められたためである。
モクズガニは甲幅七〇から八〇ミリで淡水にすむカニの中では最大である。𨦇脚に毛が密生するところから毛ガニと呼ぱれている。本種はふつう内湾や磯にすむが河ロから上流へ遡ってくる性質がある。聞きとり調査では魚を取る際に北本でも時々網にかかるという。昔は竹で編んだ筌(うけ)で捕え食用にしていた。
サワガニは昭和十年代まで、高尾地区の荒川に注ぐ沢に生息していたようであるが、今は生息していない。

<< 前のページに戻る