北本市史 資料編 原始

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第2章 遺跡の概要

第2節 江川流域の遺跡

榎戸Ⅲ遺跡 (大字下石戸下字蔵引)
この遺跡は、前記榎戸Ⅱ遺跡の北東側に隣接する。榎戸遺跡群のなかでは、最も北寄りに位置する。地形的には、低くて僅かに傾斜する台地の端縁部に立地する。
遺跡の時期・性格は、縄文時代各期に営まれた集落跡であろう。遺跡所在・分布調査で採集された遺物には、縄文早期・中期・後期・晩期に属する土器があるが、とくに後期の堀之内式が多い。
土器片の拓影図は図176・177に示した。
図176の1~3は、縄文文様であり、そのうち1・3は左撚りの縄(RL)を転がして施文したもの、2は右撚りの縄(LR)を転がして施文したものである。4は、乱雑に撚糸(よりいと)を転がして文様がつけられている。これらの土器は、中期の加曽利E式の新しい部類に位置づけることができる。5~19は、太い沈線と磨り消し縄文の組み合わせた土器文様である。縄文が少ないものは、後期初頭の称名寺(しょうみょうじ)式に分類されるものであろう。20は小円文を連続して刻んだものであり、21は櫛状の工具で円形に沈線を描いたものである。25は口縁部に右撚りの縄文(LR)をめぐらしたもの、27は左撚りの縄文(RL)を軽く転したものである。
図177の1~9も縄文後期の鉢形土器の破片類である。1・4・6は口縁部の破片で、1・4は分厚い口縁部であるのに対し、6は薄手で内側に沈線をめぐらすのを特色としている。
図177の8は磨製石斧であるが、刃部が欠失している。石質は緑色片岩製で、薄手である。

図175 榎戸Ⅲ遺跡位置図

図176 榎戸Ⅲ遺跡出土遺物拓影図(1)

図177 榎戸Ⅲ遺跡出土遺物実測図及び拓影図(2)

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