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第10章 民俗芸能・遊戯

第2節 民謡

2 仕事歌

麦打ち歌
北本市内でもっとも多く歌われていたのはこの麦打ち歌である。夏の炎天下で、くるり棒を回しながら作業に励む様子が伝わってくるとともに、諧謔(かいぎゃく)的な内容も多く含んでいることがわかる。

写真9 クルリ棒を使った麦打ちのようす

一、ハァーヨウー
  五月が来ると思い出す
  日が暮れてよ
  庭に麦が万石
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  鴻巣越えて 箕田越えて
  その先にゃよ
  三木の山王様があるそうだ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  お前さんを待ち待ち かやの外
  蚊に喰われよう
  夜明けの鐘が打つまで
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  馬室はまつちで 豆が良い
  吾が土地はよう
  砂地でさつま名が良い
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  お江戸(または 石戸)ではやる枉の下駄
  田舎ではよう
  はやるはつげの横櫛
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  石戸の宿は 長い宿
  長いとてよう
  一夜の宿はござらぬ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  麦打ち中へ 寝ろ寝ろと
  馬鹿なおやじだよ
  暑くてかいくて 寝られぬ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  見上げてみれば 富士の山
  見下ろせばよう
  三保松原の世間中
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  今年はここで 麦を打つ
  来年はいずこのはてで打つやら
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  吾が土地ばかり 日が照らぬ
  出てみればよう
  京上方は大日照り
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  酒屋の嫁は 色が良い
  良いはずだよ
  日酒を飲んで楽する
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  十七つれて 寺参り
  お手にゃ数珠よう
  たもとにゃ文のやりとり
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  お前さんは幾つ 何の歳
  私かよ
  ささぎの年で十五、六
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  田地を取るか 嫁とるか
  馬鹿な親父だよ
  田地は抱いちゃ寝られぬ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  十七、八はねむい頃
  朝起きてよう
  米とぎ桶を枕に
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  天飛ぶ鳥に 文をやる
  落とすなよね
  落とせば文は届かぬ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  さんどんと寝るか まんじゅう食うか
  まんじゅうより
  おさんどんと寝れば 後生楽
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  お江戸につまは もたねども
  お江戸からよう
  吹きくる風は 妻風
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  照れ降れ曇れ 箱根山
  晴れたとてよう
  お江戸じゃここは 見えはせぬ
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
一、ハァーヨウー
  兄弟づれで 吉原へ
  吉原じゃよう
  いとこと名乗れあにさま
  アーヤレヨセソレヨセヤレヨセソレヨセ
下石戸上 栗原とよ 明治三十六年生
     深井とめ 明治四十五年生
東  間 山本美代 明治二十七年生
本  宿 清水とら 明治三十七年生

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