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第10章 民俗芸能・遊戯

第4節 わらべ歌

子どもが集まり、遊ぶときには歌を伴うことが多い。それは時として掛け声や合図に使われるものであったり、歌に手遊びや指遊びのついたものであったり、お手玉やまりつきのように動作の伴奏になったりした。
それらは、歌うこと自体が遊びでもあり、また、歌が変わることによって同じ遊びであっても変化を与えるものであったりした。
さらに、遊びのときに限らず、子どもを寝かしつける場合にも、子どもが子どもを背負いながら、また親が添い寝しながら、やさしく歌が歌われることが多かった。
これらは、長い年月を経て歌い継がれているため、伝承者によって歌詞が変わっていたり、節に違いが出ている場合もある。しかし、それは幼いころ聞き覚えた歌そのものであり、当時のその土地の様子をそのまま伝えているものである。よって採集されたままに記録することとする。
   お手玉歌(1)
とんとん殿様 どっちござる
おんたか女郎衆の 帯買いに
帯は何帯 しゅすの帯
しめてみたらば しなしなと
たたんでみたらば ふくぶくと
部屋のすみへ おいたらば
姉御にとられて 腹が立つ
そんなにお腹が 立つならば
さつやのさつでも あげましょか
それでお腹が 立つなれば
かめやのかめでも あげましょか
それでお腹が 立つならば
たんす 長持ち みなあげる
てるしょ まるしよ
ますまず 一貫貸し申した
 (下石戸下 福島きみ 明治三十八年生)

   お手玉歌(2)
ひいふうみいよ お宮のけしきで
おはるとながめて ホーホケキョ ホーホケキョ
うぐいすや うぐいすや
たまたま 都へ上るとせ
梅の小枝に 昼寝して
赤坂奴(やっこ)の 夢をみた
下はちんちんちんちりめん
上はこんこんこんちりめん
これだけ仕立てて やるからにゃ
嫁に行っても 出てくるな
朝は早起き 四十九枚の戸を開けて
じいさん ばあさん 起きやっせ
窓のあかりで 髪ゆって
じいさん ばあさん 起きやっせ
今朝のおかずは 何じゃいな
ひじきに油揚 焼き豆腐
まずまず 一貫貸し申した
 (下石戸下 福島きみ 明治三十八年生)

   お手玉歌(3)
一番はじめは 一の宮(または 宇都宮)
にいまた 日光中禅寺
さんまた 佐倉の宗五郎
しいまた 信濃の善光寺
いつつは 出雲の大社
むっつは 村々鎮守様
ななつは 成田の不動様
やっつは 八幡の八幡宮
ここのつ 高野のこう坊主(または こぼうさま)
とおで  東京招魂社
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)
 (深井 深谷こう  大正 元年生)

   お手玉歌(4)
ごっこう ごっこう 出る汽車は
武夫と浪子の 別れ際
二度と会えない 汽車の音
泣いて血をはく ほととぎす
 (深井 深谷こう 大正元年生))

まりつき歌(1)
いちもんめ いっちょう
にもんめ いっちょうにちょう
さんもんめ いっちようにちょうさんちょう
・・・・・・・・・・・・・・・
 というふうに、どんどん増えていった。
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   まりつき歌(2)
いっせ(伊勢) にいがた(新潟)
みかわ(三河) しんしゅう(信州)
こうべ(神戸) むさし(武蔵)
なごや(名古屋) はこだて(函館)
きゅうしゆう(九州) とうきょう(東京)
 (下石戸上 岡村とみ 大正七年生)

   まりつき歌(3)
いちじく にんじん
さんしょ しいたけ
ごぼうに ムカデ
七草 やえな
ここのみ とうがん
ちょくら一貫 貸しました
 (荒井 福島とう 明治四十一年生)

   まりつき歌(4)
松山の 稲荷様は
何が好きだか 当ててみな
生豆腐に 生の油揚げに
赤いご飯が(または まんまが)大好き
てるしょ まるしょ
まずまず一貫 貸しました
 (石 戸 宿 峯尾まち 明治三十五年生)
 (下石戸上 岡村とみ 大正   七年生)
 (宮  内 大島まさ 大正  三年生)
 (下石戸下 福島きみ 明治三十八年生)

   まりつき歌(5)
おーらがおばあさんは 四十九で島田
孫し 笑うなよ 薩摩の国じゃ
猫が嫁取り いたちが仲人
わきの細道 ちょろちょろ歩く
・・・・・・・
あらまた でっかいね
あらまた ちっちゃいね
・・・・・・・
てるしょん まるまる 一貫貸しました
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   まりつき歌(6)
おらがおばあさんは
四十九で 信濃へ嫁に行く
嫁に行くとて 孫しゅうが笑う
孫しゅう 笑うなよ 薩摩の国じゃ
猫が嫁取る いたちが仲人
蝶々トンボが 一升樽下げて
裏の細道 ちょろちょろ歩く
てるしょん まるしょん
まずまず 一貫貸しました
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   まりつき歌(7)
お月さまいくつ 十三ななつ
まだ年 若いな
ねんねちゃんを生んで おまんにだかしょ
おまんはどこいった
油買い 茶買い
油屋のせどで すべってころんで
油一升 こぼした
その油どうした
太郎どんの犬と 次郎どんの犬と
みんななめてしもうた
まずまず 一貫貸しました
 (石戸宿 峯尾まち 明治三十五年生)

   まりつき歌(8)
むこう横丁の お稲荷さんに
一銭あげて ざっとおがんで
おせんのお茶屋に 腰をおろして
渋茶を飲んで
渋茶よこよこ 横目で見たら
お土の団子が お米の団子が
団子 団子
ちょくら 一貫貸しました
 (荒井 福島とう 明治四十一年生)

   まりつき歌(9)
奴っ子やたろうが 屁しった
幾つひった とおひった
小桶のしった ぶんぬけた
ぶん抜け話で つんぬけた
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   まりつき歌(10)
桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた きみ団子
ひとつ私に くだしゃんせ
あげましょう あげましょう
・・・・・・・・・・・・
 (東間 山本美代 明治二十七年生)

   子守歌(1)
お月さまいくつ 十三ななつ
まだ年ゃ若いな
赤子を生んで 誰にだかしょ
おまえにだかしょ
おまえはどこいった
油買い 茶買い
油屋のせどで すべってころんで
油一升おっこべた
その油どうした
太郎どんの犬と 次郎どんの犬と
みんななめてしまった
その犬どうした
殺してしまった なすのこやしにしてしまった
そのなすどうした
むこうとおる人が ひとつ採りふたつ採り
みんな採ってしまった
(荒井 福島とう 明治四十一年生)

   子守歌(2)
・・・・・・・・・・・・
油買い 茶買い
油屋のせどで 油一升でんごけた
その油どうした
太郎どんの犬と 次郎どんの犬と
みんななめてしもうた
その犬どうした
たかやにのぼって
蜂にちんちんさされて
かゆいともいわず 痛いともいわず
ただなくばかり
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   子守歌(3)
おらがおせどの たけちゃんは
たぁけの(竹の)なぁかへ(中へ) 子を産んで
日がらたっても乳くんねえ
だんなのお米を盗んで
かんでくれたら 死んじゃった
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   子守歌(4)
ねんねんころりん ねんころろ
おんまに乗って しゃんしゃんと
夢(または嫁)の国土に 行きました
みんなねんねん ねんころろ
ねんねんころりん ねんころろ
おんまのみやげに 竹の笹
ねんねは赤い ほおずきを
たんとたんと ねんころろ
 (石戸宿 小林むら 大正八年生)

   子守歌(5)
守りっ子は楽なよで してみりやつらい
つらいはずだよ よそだもの

ねんねんねこじれたら たたいてねかせ
たたいてねかすは 守りの役
よいよい横田の 嫁まんじゅう
甘いかからいか 食べてみな

ひとつ食べても わからない
ふたつ食べても まだわからない

みっつ食べても わからない
・・・・・・・・・・・・
(と続いていく)

ねんねん猫のけつに 蟹がはいこんだ
一匹だと思ったら 二匹だった
二匹だと思ったら 三匹だった からこい

守りっ子というものは つらいもの
朝から晩までぶったられ
雨風ふいても宿はなし からこい
 (石 戸 宿 峯尾まち 明治三十五年生)
 (下石戸下 伊藤いそ 大正  八年生)
 (深  井 深谷こう 大正  元年生)
 (東  間 山本美代 明治二十七年生)
 (下石戸上 岡村ふみ 大正  七年生)

   子守歌(6)
ねんねん よいよい 良い子でしょう
いいこで かわいこで まめな子で
○男ちゃんのちんちんに かねが入りこんだ
かねだと思ったら けんむしょ(毛虫)
けんむし 毛だらけ あかだらけ
うちの○男ちゃんな ちんちんはあかだらけ
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   子守歌(7)
親が死んでも ごく休み
隣りが火事でも まあー服
それが自分の家だった
 (深井 深谷こう 大正一年生)

   ジャンケン歌(1)
ジャンケンホカホカ 北海道
あいこでアメリカ ヨーロッパ
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   ジャンケン歌(2)
あやめが芽出した はなさか開いた
はさみでちょんぎるぞ エッサッサ
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   ジャンケン歌(3)
せっせっせえの よいよいよい
いちかけ にかけ さんかけて
しかけて ごかけて はしかけて
橋のらんかん 腰掛けて
遥か向こうを ながむれば
花と線香 手に持って
ねえさん ねえさん どこ行くの
わたしは西郷隆盛の娘です
明治三十七、八年の戦争で
戦死なされた父親の お墓参りに参ります
お墓の前で手を合わせ なむあみだぶつ
ジャンケンポン
 (石戸宿 小林むら 大正八年生)

   指遊び歌(1)
いっちく たっちく
たえもんさんのはかりめがちがって
とおよせ とよせ
遠ざんザクラの 武蔵の国の
大きく なごやの
おおたん ポイぬけた
またぐるりとまわって ぬけした
 (西 高 尾 岡田千恵子 昭和三年生)
 (下石戸上 岡村 と み 大正七年生)

   指遊び歌(2)
ずいずいずつころばし ごまみそずい
ちゃつぼに追われて とっぴんしゃ
ぬけたら どんどこしょ
俵のねずみ 米食ってチュ
チュッチュッチュ
おっとさんが呼んでも おっかさんが呼んでも
ききっこなしよ
井戸のまわりで お茶わんかいたのだあれ
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   人当て遊び歌(1)
かごめ かごめ
かごの中の 鳥は
いついつ 出やる
夜明けの 晩に
鶴と亀が すべった
うしろの正面 だあれ
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   人当て遊び歌(2)
坊さん 坊さん どこ行くの
私はたんぼに 稲刈りに
私もいっしょに 連れてって
おまえが来ると じゃまになる
このかんかん坊主 くそ坊主
後ろの(または お寺の)正面(または しょんべん)だあれ
 (宮  内 大島 ま さ 大正三年生)
 (西 高 尾 岡田千恵子 昭和三年生)
 (下石戸上 岡村 と み 大正七年生)

   つかまえ鬼遊び歌
小豆たった にいたった
にえたかどうだか 食べてみよ
ムシャムシャムシャ
まだにえない
・・・・・・・・・・・・
(何度か繰り返す)
・・・・・・・・・・・・
もうにえた
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

   羽根つき歌
一人きな 二人きな
三人きたら よってきな
いつきてみても 七重の帯を
矢の字に 締めて
しゃれっけって 一貫よ
 (石戸宿 峯尾 ま ち 明治三十五年生)
 (西高尾 岡田千恵子 昭和  三年生)

   冬(寒さ)の歌
山から小僧が 泣いてきた
なんとって 泣いてきた
寒いとって 泣いてきた
寒けりゃ あたれ
あたれば熱いよ
熱けりゃ水 水飲め
水飲めば 腹がいてえ
腹がいたけりゃ 医者へ行け
医者へ行けば ぜね(銭)がよう
ぜねが用ならば 貸してやる
借りたって なす銭があらしねえ
よくよく貧乏な がきだあっ
 (荒井 滝瀬ふさ子 大正十二年生)

   いじめっこの歌
一、○ちゃん ○がつく ○んざえもん
  ○んこの ○んむくれ ○にかけて
  ○っちゃか ○っちゃか
   (○の中に相手の子の名前の最初の字を入れてはやしたてる)
 (西高尾 岡田千恵子 昭和三年生)

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