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第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第1節 伝説

33 小豆(あずき)とぎばばあ
      高尾
むかし、高尾村に泉蔵院というお寺がありました。そのお寺の近くに昼でも暗い大きな森があって、そのまん中に底が見えないほど深い谷がありました。うす暗い谷底では清水が流れる、チャラチャラという音がひびいていました。
ある夕暮れ時、遊び疲れた村の子どもたちがこの谷のそぱを通りました。すると谷の底から、かすかに「ザッキゴッキ、ザッキゴッキ」と小豆を洗うような音が聞こえてきました。おどろいた子どもが谷底をのぞくと、あたりいっぱいにはえている笹がザワーツとゆれたのです。子どもは、飛び上がるといちもくさんに家へ帰り、その話を家族のものに話ました。小豆ババアがでる、このうわさは村中に広まりました。
村の人々は、オニババアが谷底で小豆を洗っているのだと信じてひどく恐れました。そして、大人たちは、子どもが悪いことをしたり、だだをこねたりした時に「小豆ババアが、トガマで首を切りにくるよ。」とおどしたものでした。そのころから、子どもたちは、大人たちのいうことを良くきくようになったそうです。
今、この谷は浅い穴のようになっていますが、たくさんの野鳥たちのだいじなすみかになっています。
  ▽話者・・・田島和生(昭和二十年生)・千枝さん(高尾大正十一年生)。前掲「伝説、むかし話をさぐる」

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