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第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第3節 昔話

6 花咲かじじい
おじいさんが、ポチって犬をかわいがっていたんですね。
ある時、そのポチが裏山の方へおじいさんのすそを引っ張っていくので、何だろうと思ったら、「ここ掘れワンワン、ここ掘れワンワン。」ていうので、おじいさんが掘ってみたら、大判、小判がざくざく出てきてびっくり。うちの中へ持っていっておばあさんと座敷へ並べてながめていたら、そこへ隣のおじいさんが来て、「あら、こら、どうしたことだね。」っていうから、実はポチがここ掘れっていうから掘ったらこうなった、といった。「じゃ、私にこの犬を貸してくれ。」って言って、おじいさんがいやがるのを、隣の欲張りおじいさんは無理やり借りていっちゃったんですって。で、ポチは、なかなかここ掘れワンワンて言わないんですよね。それで、その欲張りじいさんは、早くなけなけって無理やりなかしたわけ。そしたら、「ここ掘れワンワン。」ってゆったんですよね。おじいさんはそれっていうので、そこを掘ってみたら、瓦だとか、瀬戸物だとか、毛虫とか汚いものが出てきて、おじいさんはかんかんに怒って、その犬を殺してしまったんですね。「じゃ、死んだ犬を渡してください。」て、その犬を殺してしまったんですよね。
それで、ポチをなかなか帰してくれないものだからおじいさんが行ってみると、「あれはひどい犬だから殺してしまった。」というので、仕方がないからと泣き泣き犬をもらってきて、お墓を作ってやった。そして、お墓にポチの代わりに松の木を植えた。そしたらその松の木がぐんぐん大きくなって、今度はその松の木を切って、ポチの代わりに臼を作ったわけね。臼を作ってお餅をついたら、また、大判、小判がざくざくと臼の中から出てきて、おじいさんとおばあさんは大喜びしました。
隣のおじいさんがこれを見て、また、その臼を貸してくださいってかりてっちゃった。大判、小判がでるだろっていうのでお餅をついたところが、また、瓦とか、瀬戸物とか、お茶椀かけとか汚いものが出てきたので、また、隣のおじいさんは怒りに怒って臼を燃しちゃったわけね。
隣のおじいさんに、臼を返して下さいってゆったら「あの臼はひどい日だから、燃しちゃいましたよ。」って、
「あらまあ。では、その灰をください。」で、その灰をかごに入れて自分の家に持って帰ろうとしたら、サアーッと風が吹いてきて
枯木に花が咲いちゃった。「あらーっ、これは。」とびっくり。それで、おじいさんは枯木に登って、「花咲かじじい。花咲かじじい。
枯木に花を咲かせましよう。」ってゆって花を咲かしているところに、御殿様が通りかかって「めずらしいことをしているな。なんだな、それは。」「私は、この灰で枯木に花を咲かせています。」「よし、やってみろ。」というので、殿様の前で枯木に登り、「花咲かじじい、花咲かじじい、枯木に花を咲かせましよう。」っていって灰をまくと、パアーっと花が咲いたので、殿様は大変喜んで御褒美をたくさんくれました。
隣のおじいさんがこの話を間いて、私も負けちゃいけないってんで、残った灰を搔き集めてね、私も花を咲かすことが出来ますって、殿様にいったのね。で、殿様は、それではやってみろというので「花咲かじじい、花咲かじじい、枯木に花を咲かせましよう。」っていいながらバアーっと灰をまいたら、灰が殿様や家来の目や鼻にすっかり入っちやって大怒りに怒られちゃったって話。
  ▽話者・・・岡田知恵子さん(西高尾昭和三年生)

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