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第11章 伝説・世間話・昔話・諺

第3節 昔話

7 浦島太郎
ある日、釣りに行ったけれど、ぜんぜん釣れなくてしょんぼり帰ってきたところ、浜辺で、亀を子供がいじめているので、「その亀を逃がしてやりなさい。」といってもいうことをきかず、どうしてもいじめるので、浦島太郎は仕方がないのでなけなしのお金を子供たちにやって亀を受け取りました。そして、「もう、二度とここへ来るんじゃないよ。またいじめられるからね。」といって亀を海に放してやりました。
ある日、また釣りに行ったが釣れなくって帰ろうと思っていたら、あのときの亀が現れて「この間助けてもらった亀なんですけども、今日は龍宮城へご案内いたしますから私の背中へ乗ってください。」というので、浦島太郎は、どうかなあ、行けるのかなあって思いながら亀の背中へ乗ったら、不思議なことに海の水がパアーっと割れて、水の中へ入るってんじゃなくて、水の方から道を開けるようにして入って行けたっていうんですよね。
そうすると、きれいなお城のような龍宮城があって、柱は朱塗り、緑の瓦でした。乙姫様がいて、「大変、亀がお世話になりました。どうぞごゆっくりお過ごしください。」といってもてなしをしてくれました。東の部屋を開けると春、南の部屋を開けると夏、西の部屋を開けると秋、北の部屋を開けると冬の部屋に住んで、乙姫様と御馳走を食べたり、踊りを見たり楽しく三日間過ごしました。
それで、「もう、うちの人も、心配しますから、うちへ帰ります。」ってゆったら、「この玉手箱をあげます。でも、これは決して開けてはいけません。」といわれて、ありがとうございますといい、玉手箱を抱え、また、亀に乗り、スウーっと陸へもどって来られたんですよね。そして自分の住んでいた家の方へ行ってみると、みんな何処もかしこも変わっていて、自分のいた家はすっかりわからなくなっちゃったんです。そこにいた漁師のおじいさんに「浦島太郎って知りませんか。」って。「私の小さいころ、太郎という人がいて、海に出たまんま帰って来ないそうだ。それで、その家もなくなっちゃったんだ。」という話を聞いて、たった三日間だと思ったのが、三百年だったとか。
浦島太郎は知っている人はいないし、家はなくなっちゃたし、もう、どうしょもなくなって、腰をおろして開けてはいけないといわれた、乙姫様からもらった玉手箱を開けてみると、白い煙がスウーっと箱から出てきて、太郎は一度におじいさんになってしまいました。という話。
  ▽話者・・・岡田知恵子さん(同前)

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