北本市史 民俗編 民俗編一覧
第11章 伝説・世間話・昔話・諺
第3節 昔話
20 田んなかに一升徳利ある利口な旦那さまの話ですがね。
給人が四~五人いて、年中怠けてばかりいるんですって。主人公は畑に出ないで、給人だけでやってるけれど、それでいて良く知っているんですね。
ある夏の盛りの田の草取りのとき、田んぼの真ん中にそっと一升徳利をおいといたんですって。「今日は、あすこの田んぼ、みんなしてやってこいな。」って。「はい」って出ていったんですって。それで、「旦那、全部終えました。」っていったら「じゃ、そうかい。早く湯にでも入って寝な。ときに、なにか、草はみんな取ったんか。」「ええ、全部取りました。」「何かなかったか。」「別にありません。」「変だなあ。みんなが良くやるから御褒美にと思って、どうせ田んなかいっぱいの田の草を取るんだから、それじゃほねだんべと思って、来たら喜ぶだんべと、おらあ一升真ん中に置いてあんだけど。」といったって。
▽話者・・・鈴木いくさん(石戸宿明治三十二年生)