北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第2章 社会生活と親族

第5節 家と家族

3 家の相続

ここでいう相続とは家長権の譲渡を指していうが、これは原則として長男のものとされている(家長権の譲渡のことをシンショウワタシとよんでいる)。先にも触れたように、家長の権利には、家屋敷の名義、生業に関わる経営権のすべて、墓地、位牌等を含めた祖先祭祀の一切の役割を含めるので、これら諸権利も長男は継承することになる。
しかし、すべての相続が一度になされるというわけではない。相続の契機は家長夫婦の体力的衰えにともなって行われることが一般的である。そうした場合、シンショウワタシの後も前家長夫婦の権限がしばらく続くことが多い。長男は父親が健在であるうちは、たとえ家長になったとはいえ、その意見はないがしろにできないのである。そして、実際名義が書き変えられるのは、親の死後となっている。
主婦権の相続は、家長権の相続と同時になされる。ただ、この場合も家長権同様家事一切の裁量権は、徐々に継承され、実質的な継承は数年後ということになる。
ところで、長男相続が理想であるとはいえ、必ずしもそうならない場合もある。例えば、女子だけの家では、長女に婿養子を迎えて相続させている。また、数は少ないが、長男以外の男子が相続する事例もみられる。ただ、こうした非長子相続の場合、長子の身体上の理由ないし早死にといった事情によるものが多く、長男をさしおいて相続させるということは稀である。長男の早死の場合相続は二、三男の出生順になされるものとされている。

<< 前のページに戻る