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第3章 農業と川漁

第6節 川漁と狩猟

2 狩猟

鴨 猟
鴨猟は冬の間、十二月から二月にかけて行われ、カモアミ(鴨網)を使った猟とビクタを使った猟があった。
カモアミは長さ一五間・幅九尺で、網目が一寸の網をヤツダ(谷津田)のドブッタの縁に立てて、夜間に飛来するカモを待ち受けてとる方法であった。夜間に飛ぶカモであっても、網がカモにはっきり識別できるようでは網にかからぬため、この網を張るのは闇夜が選ばれた。「月夜の網張りはバカがする」「二十日宵闇」といわれ、闇夜を待って行うので一冬にそれ程の回数ができるものではなかった。長澤さんも一冬三、四回ほどであったという。また、この大きな網は風の強い時は危険なため、夕方網を張っても風が出始めると、しまって帰ってこなければならなかった。風の具合を見定めることも大切なことで、「西山(武甲山)が、いぶって(曇って)いれば風がでない」「山が晴れて見えれば風が出る」といった具合に風を見た。こうして、時を選び夕刻に網を張る。長澤さんは夫婦で網を張り、近くに隠れてカモが掛かるのを待つ。風が無ければ朝までの猟となる。カモが網にかかり、ばたばた羽音をさせると、素早くはずしにいく。闇の中でもあり、また大きな網でもあり大変な作業であった。
イタチなどをとるビクタを使ったカモ猟は、冬の間も水のあるヤツダ(谷津田)のドブッタで行った。ビクタを仕掛けるのは田の水口である。カモが田の中を歩くので水が濁り、ビクタは見えなくなる。そして、田を移る時に水口を通りビクタにかかる。これは、イタチのビクタをかけてまわった時に、残ったビクタがあれば掛ける程度で、戦後しばらくまで行われていた。
獲つたカモは業者に売るほどではないため、近所の農家に売られた。年の暮れには、正月料理の材料に買い求めに来ていた。

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