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第3章 農業と川漁

第1節 畑と畑作物

3 畑作の過程

(一)麦
麦蒔きの禁忌
前述した通り麦は蒔き旬が大事だったが、麦蒔きをしてはいけないといわれる日があった。ほぼ市内全域でいわれているのは戌(いぬ)の日で、この日に蒔くとその家で食わない人(死人)ができるなどという。戌の日を忌む理由については、すでに伝承が崩れかかり一定してない。ただし、弘法大師が中国から麦を伝え、この時に犬が何らかの関わりをしたために戌の日には麦蒔きをしないというのは共通している。
昔、弘法大師が中国で干してある麦を盗み、杖の中に隠した。この時、犬が吠えて家人が出てきたが、弘法大師は何も持ってなかったので家人は犬を棒で叩いた。それで犬は足が悪くなり、戌の日には麦蒔きをしない。あるいは弘法大師が中国から麦の種子を盗み帰るとき、犬が吠えたので見つかるのを恐れて殺した。そのために戌の日には種蒔きをしない。麦粒には白い筋があるが、これは弘法大師が麦種子をフンドシの中に隠して持ってきたからである、などと伝えられている。
麦蒔きを忌む日については、戌の日の他に卯(う)の日もいけないという人がある。この日に蒔くと膿むからだという。また、麦蒔きでは蒔き落としも嫌った。サクの途中で蒔くのを忘れてしまうことで、一サクの半分だと親戚で不幸があるなどという。そのため蒔き落としに気付いた時は、すぐにそこに種子を蒔いた。

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