北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第3章 農業と川漁

第1節 畑と畑作物

3 畑作の過程

(一)麦
麦踏み・中耕
麦は踏めば踏むほど分蘖(ぶんけつ)するので、何度も麦踏みをした。今では足で踏むことなくローラーを曳いてしまうが、昭和初期にはどの畑もひと株ずつ踏んだ。麦踏みの回数は仕事の進み具合いや働き手の人数によって違うが、通常は麦蒔き後、年内に一回、年が明けてから二回の都合三回は行われた。
麦踏みはおもに女の仕事で、子どもたちも手伝った。一回目は麦が芽だって一寸五分くらいに伸びた時、二回目は五寸程に伸びた時にした。年によっては年内に二回行うこともあった。
麦踏みをすると土寄せも行った。これは中耕(ちゅうこう)の作業で三回行い、最初は「日向に切る」といって一番ザクをする。芽を出した麦の根元に日が当たるようにサクキリグワでサク間の土を一方に寄せる。二番ザクは一番ザクとは逆に土を寄せ、三番ザクはトメザクともいわれ、一番ザクと同じ方向に土を寄せる。
こうした土寄せに二通りの時期がある。一つは暮れのうちにジョレン(ツチイレともいう)で麦の株に土を振りかけ、麦踏みをしてから一番ザク、その後年が明けてから同じように土入れ、麦踏みをして二番ザク、さらに四月になってから、再び土入れをして三番ザク(この時には麦が伸びており麦踏みはしない)を行う。もう一つは麦踏みが終ってから土入れ・土寄せを行う方法で、二月末から三月の彼岸ころまでにジョレンで株の中に土入れをして一番ザク、三月中旬から四月初めに二番ザク、さらに四月半ばに三番ザクといった方法である。
いずれにしてもトメザクは同じ時期で、麦の腰が立って穂ばらみが始まり、ひと月もすると麦のサクの間に夏作のオカボの種蒔きが始まる。
麦の追肥は現在は成育具合いを見て行われているが、施すのが遅くなると稈(から)が軟らかくなって倒れやすくなるので、早めに施す。ただし、追肥をするようになったのは化学肥料が出回ってからで、昔はしなかったという。

<< 前のページに戻る