北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第3章 農業と川漁

第1節 畑と畑作物

3 畑作の過程

(四)サツマイモ
施肥と蔓返し
麦の刈り取りが済むと六月下旬から七月初めまでにカブヌキといい、麦の刈株を抜く。サツマ苗への土寄せにもなり、この時に施肥もした。麦扱(こ)きやお茶作り、養蚕などで忙しい時期だが、灰やコヌカ、ダゴイ(堆肥)などを混ぜ合わせてサクに入れる。肥料の量は一反当たりコヌカ一〇俵(一俵は五斗)、灰八俵(一俵五斗)にダゴイは苗床のを分けて使った。現在はこれに化学肥料も混ぜて施されている。
灰はサツマイモの肥料として欠かせないとされている。しかも灰なら何でも良いというわけでなく、もっぱら藁灰が使われた。家の竈で焚いた麦カラの灰は大事に取っておいて使うが、サツマイモを多く作る家では足りず、岩槻の灰問屋や近所の仲買商から買ったほどである。なかには水田が多く、山のない行田の方に薪を持って行き、農家で薪と灰を交換してきたり、仲買や問屋を通さずじかに行田や箕田(鴻巣市)付近の農家から買い集める人もあった。
施肥は麦を刈る直前に行ったりもするが、その後は伸びた蔓(つる)を返す時にも成育具合いによって施した。蔓を返すのはツルカエシとかツルヒキといわれ、イモを掘るまでに三回くらい行う。蔓を伸びたままにしておくと、途中から根が出てしまうので蔓を持ち上げて根が出るのを防いだり、出た根を切る作業である。とくに雨の多いしけた年には根が出やすいのでツルカエシはきちんとしなければならなかった。七月に二回行い、芋掘りがしやすいように蔓の方向を揃える。

<< 前のページに戻る