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第3章 農業と川漁

第4節 養蚕と桑苗生産

2 養蚕の技術

稚蚕の飼育
稚蚕(ちさん)の飼育をコバガイと呼ぶ。掃き立てから三眠までの時期である。このコバガイの上手下手が蚕のできに大きく影響するので、養蚕の期間の中でも神経を使う時期であった。養蚕の柱であり、季節の影響を受けやすい時期である春蚕で作業を見ることにする。
春蚕の掃き立ては、五月のお節供ごろが目安であったが、四月の末に桑の葉の育ち具合を見て、いつ掃き立てられるかを決めた。
蚕龍にムシロを敷き、サンザシ(蚕座紙)を重ね、その上に催青(孵化(ふか))した稚蚕を鳥の羽根で掃き降ろす。掃き降ろすと、羽根で稚蚕を種紙よりひとまわり広くひろげ、五ミリ位に細かく刻んだ桑葉を与える。桑葉はクワキリボウチョウ(桑切包丁)で刻み、ショウギと呼ばれる笊に入れておき、稚蚕のにふりかけてやる。桑葉は若い枝先の、柔らかい葉を摘んできて与える。一日四、五回、朝・昼・晩・九時ころと給桑する。給桑は、二列の蚕棚の間に給桑台を置き、その上に蚕籠を棚から出して与えた。

写真28 掃き立て

蚕が排泄した蚕糞(こくそ)や食い残しの葉屑を取り除くことを、ウラトリと称し除沙と書く。最初のウラトリは初眠起きに行われた。この時まで蚕糞が二、三センチにたまっている。まず籾殻を六、七分焼いたものを、蚕の上からふりかける。その上に木綿の糸網(渋がかけてある)をかけ、桑を与える。すると稚蚕は網の目から上にあがって来るので、その網を持ち上げ蚕籠の筵(むしろ)を交換した。このウラトリの方法では三眠まで糸網(いとあみ)が使われ、四眠からコデナワ(細縄)の網が使われた。なお、蚕糞は肥料に利用された。そして、給桑は二眠あけると少し大きく切った桑を与えた。

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