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第3章 農業と川漁

第6節 川漁と狩猟

1 川漁

ここで川漁として取り上げるのは、荒川での漁に加え、水田及び堀で行われた漁を含んだものである。そこに棲息し、漁の対象となった魚介頰はコイ・フナ・ナマズ・ウナギ・サイ・クキ・ハヤ・マルタ・ヒラタ・タナゴ・ギギョッパチ・ドンチ・ダボハゼ・ザッコ・ドジョウ・カワガニ・サワガニ・テナガエビ・カラスガイ・タニシなどであり、かつてはサヨリ・ボラ・マスなども海から溯上してきていた。
こうした魚介を荒川でとることを専業とし生計をたてる人、あるいは生計の足しとするべく農業と兼業とする人がいるが、『石戸村郷土誌』(明治四十五年石戸尋常高等小学校編)によると、明治四十三年の専業漁業戸数は一戸、兼業は六戸、漁船数は八、漁網は六、漁獲量は五〇〇貫、価格は四一ニ円であったと記されている。また、『埼玉県水産要覧』(昭和二十八年刊)によると、県内に一六の漁業共同組合があり、荒川の北本市に接する区域で漁をする人々は、埼玉県北部漁業協同組合に加入していた。
漁法は「埼玉県漁業調整規則」(昭和ニ十六年)による許可漁業と自由漁業があり、以下に紹介する漁法の中から許可漁業を拾い上げると、ハリキリアミ、セバリアミ、マチアミ、ヨッデアミ、トアミ、ウナギカキ、ヤス、それに各種のウケなどがある。
ハリキリアミ(張切網)については大正三年・五年・六年、昭和二年の四通の「定置漁業免許願」および関係書類が残っている。石戸宿と荒井の漁業者から埼玉県知事へ提出されたもので、関係書類は定置漁具の構造を解説した「漁場構造方法書」、それを図示した「構造図」、地先の荒川の漁場図面の「定置漁業漁場図」、それにその免許の「請書」である。
そこでハリキリアミについては、この「定置漁業免許願」より紹介し、それ以外の漁法は聞き書きより紹介する。

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