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第3章 農業と川漁

第6節 川漁と狩猟

1 川漁

(1) 網漁
セバリアミ
セバリアミ(瀬張網)は荒川でマルタを獲る漁で、桜が散る間際ごろの四月中旬から十日間ほどが年一回の漁期であった。産卵に遡(そ)上してくるマルタを獲る定置漁法で、漁期の間は夜を徹して魚を上げた。獲れる時は何百本と獲れたという。網を張る場所は、川底に砂利が多く、深さ三尺足らずの瀬であった。
セバリアミは、図10の構造で川に設置する。遡上するマルタの先をさえぎるように、対岸との間に網を張り、川を仕切る。網を張るには適当な間隔で杭を打ち、網の上は川面より少し髙くし、裾(すそ)は石で止める。この網の目は、小魚は通り抜けられる五センチ程のものが使われた。そして、この川を仕切った網には、マルタが通れる幅のV字型の隙間(すきま)を二~三か所開けておくが、この魚通りの作り方がうまくないとマルタは通らないという。その魚通りの上流側には四角く網を張って、マヤと呼はれる魚溜(うおだま)りを作る。そのさらに上流には水面から一尺程上に、トビアミと呼ばれる水平網を張っておく。遡上するマルタは川に張り渡した網で行く手を阻(はば)まれ、魚通りに作られた隙間からマヤへ入り、さらに遡上のためにマヤからトビアミへ跳(は)ね上がる。こうしてトビアミに上がったマルタを近くに付いていて、すくいとったのである。

図10 セバリアミ

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