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第6章 衣・食・住

第2節 食生活

1 食料と食事

食器

写真10 膳椀(儀式用)

普段の食事の食器は、古くは箱ゼン(膳)を使ったが、その後、次第にチャブ台に変わった。その間、家によっては、年寄りが箱膳で子供が他の膳を使用したり、主人などが足付き膳、その他の人が足のない平膳を使ったりした。このような一人一人の膳は昭和三十年くらいまで使用したが、チャブ台を六〇年くらい前から使っていた家もあった。箱膳は箱の中に、飯茶ワン(碗・陶製)と汁用の椀(木製)、オテイショ(陶製の小皿、今は各人におかずをつけるが、昔は大皿に盛り上げておいて、自分でオティショに取り分けた)、箸が入っていて、食べるときにふたを裏返した上に出して使う。置き方は、手前左側に飯茶碗、右に汁用の椀で、この逆の左膳は葬式のときの置き方として嫌がる。食後は、飯茶碗に湯を入れて汁椀に移し、その湯を飲んで箱膳の中にしまって、そのままオカッテにある戸棚に入れておいた。このほかには、普段、箱膳の中の食器を洗うことはあまりなく、正月がくるからお膳をきれいにしようなどといって時々洗うくらいであった。また、足付きの膳や平膳は、重ねて戸棚にしまった。この膳や椀・箸・オティショ・湯飲み茶碗などは、嫁入りのときに布団や着物などと一緒に、嫁が自分と主人の分二組くらいを持ってきた。

図10 箱膳(荒井)

冠婚葬祭などの人寄せのときに使用する塗り物の膳や椀は、個人の家で持っていたり、集落で共同のものを所有している場合があった。一例をあげると、荒井の馬場地区では、二〇軒ほどの組で黒塗りの椀や膳(高足膳)を三十人分ほど持っていて、客のあるときは無料で借りて使うことができた。これはある家の蔵に保管してあり、使いたいときに二、三人で行って話をして借りてきた。
弁当箱に使うメンツなどは荒物屋に売っていた。

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