北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第6章 衣・食・住

第3節 住居

5 建築儀礼

チョウナハジメ
大工の作業始めをチョウナハジメ(手斧始め)といった。建築現場で木を刻み始めるのである。
これに先立ち、立派な二階建ての母屋を建てるようなときに限られていたが、「リュウバシラ(龍柱)」を建てる儀式があった。昭和の二十年代までのことで、三十年代には行われなくなっていたようである。まだ古い家があるとき、母屋の左手前辺りの庭に、この龍柱は建てられた。長さ二十尺の四寸角の柱で、その家の高さを写したカナバカリ(矩計)のついたものである。玉石の上に添え木を使って建て、同時に鬼門に向けた弓矢とへグシを添えた。この龍柱を建てる祝いのとき、家を壊すこと、土盛り、地鎮祭などの仕事の手順を決め、手伝いに来てくれる近所の人や親戚に協力を求めた。母屋の普請は数代に一度の大事業であって、周囲の人達の協力がなくてはとても成し遂げられるものではなかったのである。また、家内においては、一年も二年もかかる普請に、色々な人たちへの気苦労も多く、特に、女の人達といった裏方の骨折りもまた大きかったのである。「母屋普請をすると必ず一人犠牲者がでる」といわれたものなのである。

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