北本市史 民俗編 民俗編一覧

全般 >> 北本市史 >> 民俗編 >> 民俗編一覧

第7章 人の一生

第2節 結婚

1 結婚の条件

見合い
貰ってもよさそうだとなると見合いになる。一〇人見合いしたとか、五人したとかいう人も随分あった。昔はほとんど麦播きを終えてからでないと結婚の話は始まらなかった。見合いは、女の方へ男が行った。一緒に道案内かたがた仲人のジイサンの方がついていく。牡丹餅を出してくれて気に入らないとそれを食べなかった。牡丹餅をおいしそうにきれいに食べると話を承知したことになる。仲人さんに任せておきます、と親御が言えば仲人とせがれで菓子折り程度を持っていった。親御さんは、ショウバンといって、酒の世話をした。てんぷら程度を作って酒と一緒に娘さんが出した。その際の娘の顔つき、足つき、態度を見て、嫁にもらうかどうか決めたものだった。一杯飲んだ後牡丹餅が出る。酒と御馳走は食べても牡丹餅を食べないと、娘を気に入らないということになる。
お見合いの席にはおはぎとうどんと、酒の肴にはてんぷらをこしらえて出した。
牡丹餅は「丸くおさまるし、うどんは「長く続く」の意味をもっているから出すともいう。
常光別所のUさんの見合いのときには父親がついてきた。ところによっては、男の方の家のイチ隣りの近所の人がついてくることもあった。母親は来なかったから、姑は嫁入りしてから初めて顔を見た。夫の顔だってよく分からないから、運をかけるようなものだった。見合いしました、いついつが結婚式といっても、途中で二人が顔を合わせても分からないぐらいだった。
常光別所のKさんのお見合いの話は、見合いのある二、三日前までは当人には話さないでいた。見合いは娘の家の客間で行われた。話があってからその年の内にやったが、大体話が決まってから見合いという事になるから、見合いして断るということはなかった。お見合いの席には仲人バアサンが一人で男さんを連れていった。娘の方では親が話相手をする。お給仕に代わりの妹を出したという話もあって、もらって見たら馬鹿みたいという笑い話もある。占いの人に見合いの相手方の様子をみてもらったという人もある。昭和六年生れの人で、お礼としてお金を三〇〇円ぐらいおぼしめしとして出したという。
見合いを終えてから、仲人が両方の家へ返事を聞きに来る。
話がまとまると「確かにもらう約束しました」ということで、幾日かおいて、もらう方から「樽入れ」をした。ずっと前はせがれも行って向こうの家族と一杯やって来たものだったが、仲人さんだけが行くようになった。「樽」というのは「柳樽」が正式だが、お祝いの喜び事として一升瓶二本持って行く人が多かった。樽入れすれば、若い二人は行ったり来たり交際を許された。
樽入れの次の日に、結納の日取りを決め、額を相談する。
見合いの後双方の意志を固めるため、男の方の親とハシカケナコウドと親戚何人かが、一升酒を持って女の方の家に行くことを「クチガタメ」という。女の方では親戚を呼んで簡単な宴をする。この日に正式の仲人(媒酌人)のことや結納の日取りや額を決める。酒代を持っていく場合もある。結納をもらう方は「おぼしめしで結構です」とあいさつする。

<< 前のページに戻る