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第7章 人の一生

第1節 産育

産 婆
市域では、出産に手馴れたお婆さんのことをトリアゲバアサンといい、明治三十二年(一八九九)産婆規則の試験に合格した職業人を産婆さんと呼ぶ。しかし産婆もトリアゲバアサンといって親しみを込めてよんでいる場合もある。
荒井地区のY (明治三十六年生)さんは、はじめのうちは、近所のいわゆるトリアゲバアサンに取り上げてもらったが、昭和に入ると規則がやかましくなったので、最後の方は産婆さんに頼んだ。
荒井地区のI (大正四年生)さんは、お産婆さんにかからなくては証明書を役場に出せないので、川向こうのお産婆さんに診てもらった。妊娠五か月目に産婆さんが妊娠届けを役場に出してくれた。役場に届けると、役場からフランネルの腰巻きがもらえた。戦時中は、子どもを出産すると衣料キップが支給された。
妊産婦と産婆との関係は、妊婦が腹帯をしめてもらう時から始まる。そして、分娩の世話から赤ん坊を湯にいれに通い、お七夜まで面倒をみ、なかには、子の名付け親になったこともあった。しかし、お産の礼は僅かであり、社会的には軽くみられていたようであった。

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