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第7章 人の一生

第2節 結婚

2 婚礼

嫁入り
婚礼の前の晩に、分家か本家が手伝って、紅白の餡(あん)入り餅をついた。おちつきの餅といって、嫁方も婿方もそれそれ親戚に配る。
嫁を迎えに婿の方からイチゲンの客が行く前に、娘は髪結いに行って高島田に結い、白い角隠しと江戸褄姿になった。振り袖は家柄のよい家の場合だけである。小作人の子が振り袖を着ると笑われた。振り袖を着たくても家の格を考えて江戸褄にした。江戸褄は借りてでも着た。白足袋にポックリ下駄を履いた。
荒井では、嫁入りの日の昼間、本家とか分家のおばさんがついて、花嫁仕度をして、ムラの神社へお参りした。実家を出るときに、隣近所を呼んで「デシュウギ」の酒盛りをする。呼ばれた人は、いくらか金を包んだり品物を持って行く。この出祝儀のときは仲人が出るくらいて、婿の方からは誰も来ない。いよいよ嫁が実家を出るとき掃き出す真似をする。また、カドビ(門火)といって、藁を束ねた松明(たいまつ)二本に火をつけ、この間を通って出て行く。このカドビは、両親のいる子供二人に持ってもらう。

写真14 婚礼正装

(昭和20年ころ)

写真15 婚礼正装

(昭和53年)

嫁入りするときには、途中で日が暮れてはいけないので、早くなら日が高いうちに出かけろ、どうせ日が暮れるなら、日が落ちてから行こうといった。嫁入りする娘の方は少しでも家にいた方が良いから、日が落ちてから家を出た。常光別所のUさんは、タ方日が落ちて薄暗くなってから、弟と叔父、叔母がついて行列して送ってもらった。荷主に分家とか本家がなって、荷車を引いて行った。弓張り提燈一つをつけて、暗い中を下駄を履いて二里でも三里でも歩いて行った。嫁さんはポックリ下駄でお伴も荷物をしょって下駄を履いた。
オトモの若い女の人が一緒に婿の家までついて行く。これをソイヨメという。また、いい家の場合マチニョウボウ(待女房)が二人つく。花嫁の母の歳ごろの人を頼む。丸まげを結っている。もらう方から待女房が門口まで迎えにきて、嫁さんの手を引き、家に迎え入れてその後の世話をする。嫁入り後三日間、嫁が里帰りをするまでの間、仲人がついている。

写真16 三三九度の盃

二ッ家のYさんの親は婿入りで、長持に挟み箱を持ってきたという。途中で挟み箱の着物でお召し替えをしたという。
他村から花嫁行列で来ると、道中で若い衆達に酒などを振る舞ったりもした。若いもんがひやかし言葉をかける。
嫁の行列が家の前の角まで来ると、婿の方の紐合の人が、紋の入った弓張提燈・高張提燈に火をともして迎えに行く。町場の場合、組合などの近所の者が、皆提燈をつけて、嫁の一行が来る途中の道の両側で、ぞろぞろ待っている。そして、花嫁が家に入るまで送りこむ。
婿入りの際にはどうするのか。婿方の家には、仲人夫婦、オトモとして仲人の子供一人と嫁が迎えに行き、帰りには、兄さん、叔父さん、分家の息子と聟が来る。婿を迎えるとき嫁は先に帰っているので、婿が玄関から入ろうとする際に、いったん嫁は外に出る。嫁が先に入っているとカカア天下になるからだという。

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