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第7章 人の一生

第2節 結婚

2 婚礼

嫁の入家式
婿の家では組合の人が庭に、臼(すわりがいいように・どっしりすわる)、杵(男性のシンボル)、箕(箕であおぎ込む)、菅笠(下を見て暮らせ、上を見るな)、松明などを用意して待っている。夕方になると嫁が、嫁の両親、親戚と一緒に婿の家にやって来る。オショウバン(指図する人ー組合の人、建て前のときもやる)がいろいろと手順通りに事を進めていく。嫁は、松明の間を通りぬけ、杵をまたぎ、頭に菅笠をかざされ、玄関から座敷に上がる。オチョウ・メチョウの男の子と女の子が三三九度の盃を新郎・新婦にさす。ここまでを入家式と呼んでいる。
各地で同様なやり方をしている。
常光別所では、ケエドウの所まで弓張り提燈に火をつけて、嫁を迎えに出た。近所の人が桑の木で真中に杉っ葉を入れて作った松明をつけて持っていく。玄関の軒下では松明を両方からかざしている。その間を仲人が手を引いて嫁さんが通る。菅笠を近所の人がさしかけた。篠竹の上は紙を巻いた杖を持たせた。柄付きの杵を軒下の先に転しておいて、それをまたがせてトブグチから入れる。婿入りの場合は表からあげた。
荒井では、夕方組合の男の人が二人ケイドウに出て、紋所のついた弓張り提燈を持って出迎えに立つ。嫁が婿の家に入る前に近所の子供のさしかける松明をくぐる。これをタイマツトバシ(松明点し)という。本通りの庭のところには組合の人が用意しておいた杵があり、その杵の太い方を嫁にまたがす。この時に菅笠を近所の女衆が頭にさしかけてやる。また近所の老人がかぶせる真似をする。嫁は仲人と玄関から入るが、嫁方の客は縁側から入る。帰るときも縁側から出る。「大きな杵(男根)を見てもたまげんな」という意味で杵の太い方をまたがすとか、嫁に「下を見て暮らせとか雨が降っても働け」という意味で菅笠をかぶせるとも説かれる。
高尾では花嫁が門口を入る際にそこで松明を焚く。麦や稲の藁束二束を近所の女の人が持ち、その松明に火をつけて両側からさしかけ嫁はそこをくぐって来る。花嫁の後ろから屋敷内に送り込む。隣り組の人が被り笠を被せる真似もした。玄関のトボグチの前には、臼をひっくり返して、それに杵を立てかけてある。花嫁がトボグチをまたぐ前に、臼と杵とをまたぐ真似をした。仲人が手を引いて、これを今度はまたげと教えてくれた。後で聞いた話では嫁さんがたまげないようにそういう事をするのだという。杵が婿さんで臼が嫁さんでそれをまたぐのは当然だろうと言っていた。
北中丸でも嫁が来ると、トボグチから入るとき、松明を燃やして杖をついて菅笠をくぐり、杵をまたいだ。そして控の間で嫁は休む。
座敷にはアガリハナから上った。手伝いの人が出したお茶一杯を飲む。または、姑からお茶を一杯もらってから上がる。まず床の間へ行き、それから先祖様(仏壇)に参って御祝儀の座につく。大神宮の神棚と仏壇以外に、オカマ様と家のイナリ様にお参りし、あとで村の神社へもお参りした。北本のKさん(昭和十年生)が嫁入りした時、拝んだ神様を順に記すと、先ずオカマ様(荒神様)、次に村の氏神の天神様、それから家のイナリ様、最後に仏壇と大神宮の神棚となる。東間のKさん(大正六年生)は、嫁入りしたときに、一番に仏壇にお参りし、二番目に家のイナリ様と村の神社にお参りした。

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