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第9章 年中行事

第1節 正月行事

5 小正月

マユダマダンゴ

写真15 マユダマ

写真16 アワボ・ヒエボ(高尾)


高尾では十四日団子作りをする。トシガミサマには梅の枝に直径二寸ぐらいの大きいもの十二個、床の間神様には昔養蚕が盛んだったので、丸や繭形のものを、カマガミサマ(竈神様)には丸三六個を付ける。土間には俵を飾り、タワラガミサマといってコナラかヤナギの木に付けられるだけいっぱい つけた。マユダマ木だけは、どこの木を切っても文句を言わない習わしである。また、縁先にオテントサマ(お天道様)にといってマユダマを飾るが、これを食べると厄病にかからないといった。繭玉団子のゆで汁や洗い水を柿などの成り木にかけて、「成るか成らないか、ならなきやぶっきるぞ」といって、鉈で傷を付けて、ゆで汁をかけた。
下石戸上では、正月十四日を女正月という。丸い団子や、里芋・薩摩芋・繭などの形をした団子を、小枝の多い木にさして、神棚に飾った。「ナスがよくとれますように」といいながら、ナスやキュウリの形の団子を作ったという家もある。団子を刺す木は何の木でもよいが、年神様にあげるものだけは梅の木を使い、丸い大きな団子十二個を刺した。台所の竈の近くの柱には、丸いものをたくさんつけて飾った。また、五つか七つ丸い団子を木に刺して、墓地にも持っていった。十五日の午後はタナサガリ(棚下がり)で正月の飾りを片づける。この日で正月は終わる。団子は煮て食べたが、年神様の団子を娘にやるとクニメグリ(国巡り)をするといい、娘にはやるなといった。
下石戸下では、メナラ、エゴなどの枝にマユダマダンゴを付けて、座敷や神棚に飾った。年神様には大きいもの十二個、閏年は十三個をつけて飾る。一番にぎやかなものは下大黒の俵神様の繭玉で、大きな枝に丸いものや繭形のもの、里芋、薩摩芋、桝などの形のものをたくさん付けて飾る。
石戸宿では年神様に団子を上げるといって、米の粉を練って、丸や里芋の形、繭の形にして、桑の枝に刺して、大黒柱の所に飾った。また、土間の鍬置き場には、大きな木にまあるい団子をたくさんさして飾った。小さな物は、家中の神様に飾った。また天神様にも持っていって供えた。
深井では、十四日にダンゴサシをする。マユダマともいう。繭の形や作物の形の米の粉ダンゴを作って蒸かし、形のよいナラの木に五つか七つずつさして、大神宮、床の間、恵比寿大黒、仏壇に供えた。今は木にささず、団子だけをキジラキ(神様専用の皿)にのせてあげている。団子をはずすころになると、固くなっていてなかなか枝から抜けない。それで枝ごと火で焼くと団子が柔らかくなって、枝から取ることが出来た。団子は焼いて食べたり、小豆粥や雑煮にもいれて食べた。何も食べるもののないころだったので、結構うまかった。

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