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第9章 年中行事

第3節 盆

1 盆の準備

盆棚作り

写真35 盆棚の上段(下石戸下)

八月十三日の午前中、仏壇とは別にボンダナ(盆棚)を作る。
ボンダナを飾る場所は、仏壇の前とか座敷などで、樽や箱、蚕台を台にして戸板を乗せてこしらえるものから、大工に作らせた組み立て式の物までいろいろの形がみられる。盆棚の四隅には笹の付いた青竹を立て、マコモの縄を張り、ホオズキやまだ青い稲穂、豆、柿などをつるし、提灯も飾る。盆棚には仏壇から位牌を移し、まわりには十三仏の掛け軸や善光寺から受けたひは日牌・月牌などを下げる。
高尾のある家では十三日の午前中にシンコ竹(春に生えた新しい青竹)四本を伐り、箱を台にして四隅に立てる。台にござを敷き、両側には障子を立てる。真ん中に先祖の位牌を置き、周りに施餓鬼の掛け軸(常勝寺や和歌山の高野山から受けたもの)をつるし、盆花(造花屋から買った蓮花二本)を供え、提灯をつるす。前の方の縄には色紙の短冊やホオズキを下げる。盆棚の前側はマコモで囲ったが、最近はマコモが取れなくなったのでチガヤを使っている。仏壇から盆棚に先祖の位牌一切を移し、仏壇は掃除をして戸を締めておく家が多いが、ルスイッコ(留守居子)といって、子供の位牌一つを仏壇に残しておく家もある。子供の位牌はムエンボトケ(無縁仏)といって下の段に飾る家が多い。
下石戸上のある家では、障子を斜めに立て掛け、その前に樽を置き、戸板を乗せて盆棚にする。四隅に竹を立て、縄を張って周りに掛け軸をつるす。戸板の下が見えないように笹竹で隠す。盆棚の上に仏壇の位牌全部を出しトウモロコシ・サツマイモなどの初物や西瓜・ブドウ・桃などを買って供えた。
石戸宿の某家の盆棚は、組み立て式の木の棚を毎年使っている。大きさは奥行き三尺五寸、間口六尺ほどである。上に縄をかけ、色紙をつるし、棚を囲むように掛け軸を掛けて、位牌を置く。掛け軸は、先祖の戒名を書いたもので、本山で回向してもらった証だという。先祖代々のものがあり、また一人の仏様に何本かの掛け軸があることもあるが、盆棚に掛けるのは二〇本位である。
古市場のある家では、盆棚は竹の柱を立て、四斗樽に戸板を乗せてゴザを敷き、まわりには掛け軸を掛ける。上には縄を渡して色紙とホオズキをつるす。ゴザの上に位牌を出し、カボチャ、スイカ、花、水、線香を供える。

写真36 盆中の仏壇(下石戸下)

写真37 盆の供物


写真38 盆棚のナス馬と供物

盆棚に特有の供え物にミズムケ(水向け)というのがある。二つの容器を準備して蓮や里芋の葉を敷き、片方には水を入れ、そばにミソ八ギを束ねたものを添えておく。お参りに来た人はミソハギを水につけ、その水をもう一方の器にふりかける。これをミズムケといい、三回行うものとされている。
荒井では十三日にお迎えに行く前にミソハギを取ってくる。ドンブリに水を入れておき、ミソハギの枝で「御先祖様暑かったでしょう」と位牌の上に水を掛ける真似をする。水は毎日取り替える。盆参りに来た人も、線否を立てる前にミソハギで位牌に水を掛けるしぐさをする。下石戸上では里芋の葉を器に敷いてナスを刻んだ供え物をのせ、ミソハギの枝を水につけてかけた。高尾ではお寺に供養に行くと梵字らしいものを書いたへギカワ状の品二枚をくれる。これを盆の期間中盆棚の上に置き、その前に里芋の葉を敷いてドンブリに水を満たして上げておく。盆棚の上に置いた水鉢を盆様の足のすすぎ水という人もある。下石戸上ではナスにオガラ(麻殻)の足を付けた馬を作って、盆棚に飾る。線香を上げるたびにミソハギの枝を水につけて、ナスの馬に水をかけた。深井では盆棚にミソハギの花を供える。水を入れた器に里芋の葉を敷き、花を下にして入れる。ミソハギで位牌の頭に水を少しつけた。

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