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第9章 年中行事

第3節 盆

2 盆行事

送り盆
御盆様は十六日の夕方に送る。元は十五日の夕方が送り盆で、十六日には改めて墓に線香を上げに行っていたのであるが、どうせ十六日に線香上げにいくのだから、送り盆を十六日にすればよいということで、二〇年ぐらい前からこうなった。十六日の朝、ナスやキュウリの馬と土産団子を作って盆棚に供え、昼には幅広のうどんを打って生のまま盆棚の縄にかけておく。うどんは仏様が土産をかついで帰るショイナワ(背負い縄)だといい、ナスやキュウリの馬にも二、三本背負わせる。土産団子を馬がしょっていくのだという。夕方家族そろって盆棚の前で食事をすませる。

写真39 送り盆のキュウリとナスの馬(下石戸下)

写真40 青竹の線香立て(下石戸下)

暗くなる七時か八時ごろお茶を上げ、仏壇から提灯に灯を移し、「お粗末さまでした。送りますから」といって、盆棚に供えた土産団子やナス・キュウリの馬、花などを持って墓まで送っていく。盆が終わると位牌は仏壇に戻し、盆棚はすぐこわして庭で竹、箸、縄などを燃やす。元は伝染病で死んだ人の焼き場があったので、そこで燃やしたともいう。

写真41 ボタモチ作り(下石戸上)

下石戸上では、八月十六日の夕方、盆棚のお灯明から提灯に灯をうつして、墓に送っていく。線香を上げ、提灯の灯を消して帰ってくる。この時盆棚の四隅の青竹を切って線香立てを作り、ナスの馬と一緒に墓に持っていく。
荒井では、八月十六日の午後四時ごろから夕方にかけて送る。^棚から提灯に灯を移して、迎え盆の時と同様にサモト(縁側)から出る。送り火はたかない。盆棚に供えてあった水、線香、オサゴ(生米)などと土産団子を持っていく。土産団子の数は偶数にする。送りには、できるだけ二人以上でいくものという。この日の食事は、朝がボタモチと団子、昼がうどん、夜は小豆飯である。
石戸宿では十四日には、仏様に早くに茶を上げ、それを下げてからオハギを上げて、一〇時ころに茶を上げ、昼に冷麦を上げて、また茶を上げる。夜は御飯を上げる。オハギはキナコとアンでくるんだもの。十五日にはショイナワといって昼ごろ盆棚にうどんを掛けておく。仏様がこれで土産を背負って帰るという。また、仏様が馬で帰るようにと、早生ナスにオガラ(麻殻)で足を四本つけた馬をこしらえる。夜七時半ごろ、盆棚の灯を移した提灯を持ってザシキ(座敷)から出て墓に行き、灯を消して帰ってくる。送り盆の時は、墓で石塔の上から水や米をかけて清める。盆棚に飾っておいた前年の金花、銀花や赤や紫の花は、十五日に送る時に家の門口や道の辻にさす。十六日には力マイレに行くといって、墓参りする。
深井では送り盆にはナスに四本オガラ(麻殻)の足をつけ、トウモロコシの毛で尻尾をつけてナスの馬を作る。仏様がこの馬に乗って帰るという。送り火にはオガラ(麻殻)を燃やす。このオガラは仏様の膳の箸にも使った。十六日の夕方、盆棚の位牌の前で提灯を回して「お入り下さい。お粗末いたしました」といいながら、盆棚から提灯に灯を移して、家の者全員で寺へ送っていく。また、送り火の上を三回またぐと下の病にかからないという伝承がある。

写真42 地蔵堂の送り盆の花(常光別所)

常光別所では卜五日の夕方、盆棚の灯を提灯に移し、米、線香、お賽銭花を持って地蔵堂(埋め墓)に行く。ケイドウ先に竹を細く割いてコウガンロウソクという小さなロウソクを立て、仏様が乗る三本足のナスの馬や線香を飾る。ナスの馬は墓ではなくて、途中の道しるべの所に置いてきた。

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