北本市史 民俗編 民俗編一覧

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第9章 年中行事

第4節 秋から冬の行事

2 十、十一月の行事

秋のエビス講
十月二十日は秋のエビス講である。月遅れで十一月二十日にやっている家も多い。正月のエビス講と同様、エビス・ダイコク様をチャブ台に下ろし、お高盛りの御飯などを供えて祭る。祭り方は正月のエビス講とほとんど変わらないが、正月はデベス講でエビス様が働きに出るので、なまじっか金をたくさん持たせるとよく働かず遊ばれるので少なめに、秋はキベス講で一年間よく働いて帰って来られるのだから、金も供物も奮発してたくさん供えるなどという。
石戸宿では、一月のエビス講には「よく働いてくれれば、秋にはたくさん盛ってあげます」といって、山盛り御飯、ケンチン汁、サンマ、お酒を供える。お金や商売の帳面も上げる。秋はエビス様が稼いで帰ってくるので、供物をたくさん供える。エビス様の供物は、福があるように皆で下げていただいた。
下石戸上では、エビス様は農業の神様だといっている。エビス様は二月に農家の働きに出て、十一月に帰ってくる。それで、二月と十一月にエビス様を棚から下ろして床の間に飾り、御飯、酒、サンマをお供えしてエビス講を行いお祝いをする。
深井では、十一月二十日のエビス講にはシンゴメ (新米)の御飯とケンチン汁、生鰯をエビス様に供えた。ケンチン汁は、刻んだゴボウ、人参、里芋、大根に油をたらしてよく炒め、油揚げ、豆腐などを入れて鍋でことことよく煮て、醬油で味をつける。鰯はエビス様から下ろした後、焼いて食べた。
宮内では、稲刈りを終えて十一月二十日のエビス講、あるいは、十一月二十三日の新嘗祭の日などに、ホカケ(穂掛け)といって刈り上げの祝いをする。新米を炊き、家中の神様に供えていただく。
下石戸上、深井などの例にみるとおり、北本市域ではエビス様は農神と意識され、エビス講は神無月のオカマ様の祭り同様、秋の収穫祭と考えられているのである。
エビス信仰は、兵庫県の西宮神社を本社として全国に伝播したもので、室町時代には、烏帽子姿で鯛を釣り上げた神像が福神としてもてはやされたらしい。しかし東海道筋から関東以北への伝播は、寛文七年(一六六七)閏二月にエビス像神札の頒布について幕府の裁許を得てからで、エビス大夫がエビス神札を配り、エビス信仰を伝播したらしい。それも最初は、福神として都市部の商家を中心に進められたらしく、農村への伝播は江戸後期以降のことのようである。福をもたらすエビス神が、農村では作物の豊穣をもたらす農神として受け入れられ、西宮神社の誓文払いの日取り十月二十日が、神無月の神祭りの日と近いこともあって、この日に農神として祭るようになったものと思われる。

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