北本の石仏

社会3 >> 北本の石仏

【序】

寒念仏(かんねんぶつ)一僧おくれ通りけり   蘇 南

古い時代の信仰に生きる村落のようすの一端を彷彸(ほうふつ)させてくれます。高尾地区には、寒念仏供養のために造立された地蔵を数体かぞえることができます。
さて、どこの村落を訪れても普遍的に存在するものに路傍の石仏があります。
かつては村々の人々により真剣に信仰されて来たこれらの野の仏たちも、社会構造と生活様式や生活意識の変容にともなって、いつしか信仰も薄れ、存在の意義が没却され、あるいは苔むし、あるいは風化の進行にまかせて、荒廃の一途をたどっているといえます。他方で、本市のように急激な都市化に直面している地域では、石仏そのものが、ある日突然に持ち運ばれてしまうという危惧なしとしない現状であります。
そこで当委員会では、取敢えず路傍の石仏を対象にして緊急に現状の確認調査をし、今後の対策への資料を入手したわけであります。本集は、この調査結果をまとめたもので、遺漏が多いのはもとより覚悟ですが、追って行なう寺社関係の調査と相俟って完全を期したい所存です。
知る、接するは好きになる、愛するのはじめであります。本集が機縁となって、石仏へのよりよい理解者、対話者となられるばかりでなく、北本市をよく知る一助として活用され、あわせてこれが保護にご協力くださるようお願いし、刊行のことばといたします。
なお、この冊子の編集については岡田先生をはじめ、編集委員の人達の利害を離れた絶大なお骨折りに対して厚くお礼を申上げます。
 昭和47年3月

北本市教育委員会教育長
大護 俊英


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