谷津ものがたり まえがき等

自然2 >> 谷津ものがたり

プロローグ

今日、私たちの身のまわりを見渡しますと、かつてメダカやドジョウをとった小川はコンクリートのU字溝になり、段々畑だんだんばたけ棚田たなだの美しい風景も耕地整理や圃場整備ほじょうせいびでその多くが消えてしまいました。
私たちのまわりでも平地に広がっていた雑木林ぞうきばやしは宅地の増加により年々少なくなってきました。大宮台地最高の高さを誇り、起伏に富んだ西側地域にも同じように変化の波が押し寄せてきています。
それでもまだまだ北本市は自然が豊かに残されているまちです。
この自然を次の世代にも残し、さらにその次の世代にまで残すにはどうしたらよいのでしょうか。
市では「みどりのフェスティバル」等を企画し、緑の大切さを市民と共に考えようとしています。また緑地公園を指定したり、雑木林を買い上げてこれ以上減少しないよう努力しています。
市史編さん室や公民館をはじめ各種団体も、バードウォッチングや虫採り、野草観察などの催しものをしています。より多くの人が豊かな自然とよろこびを体験できたら、おのずとそのすばらしさは次の世代に引き継がれるのではないでしょうか。
皆さんは野に咲く花や草、木の実を使ってどんな遊びができますか。水辺でどんな虫が採れるか知っていますか。カブトムシやクワガタを捕まえたときの心臓しんぞう高鳴たかなりを覚えていますか。忘れていたかも知れない自分の子どもの頃のことを思いだして下さい。そしてそれらを子どもたちにも伝えようではありませんか。
公園のすみに咲いていたタンポポをんだ子が、近所の人に「お花がかわいそうでしょ」と注意された親の投書が新聞に掲載けいさいされていました。この子はタンポポ笛も、タンポポの首かざりも、タンポポの花冠はなかんむりも、タンポポの腕時計も知らずに大きくなるのでしょうか。
洋服に虫が付いたと顔色を変えて叫ぶ子がいます。人に害を与える虫かどうかではなく「厶シ」がこわいのです。子どもは大人より小さな生き物と大胆だいたんにつきあえるものではなかったでしょうか。それがいつのころからか変わってきました。自然に触れ合える環境が身近に無くなったからではないでしょうか。
最近「昆虫採集」は悪者になってきているようです。これらが相まって異常なほど虫をきらう子や自然に全く興味を示さない子が生まれてきています。昆虫採集に、しゅの絶滅や環境破壊かんきょうはかい生命軽視せいめいけいしを心配する向きもありますが、昆虫の復元力はものすごく、子どもたちが採ったくらいでいなくなった種などほとんどありません。
親子で採ってその触れ合いの中でいろいろなことを調べることをおすすめします。
ただしそのためのマナーはきびしく守っていただかなければなりません。田畑や屋敷林では持ち主に断わるべきです。田圃たんぼあぜは「道」ではありません。水田の一部です。そう考えると採集可能な場所は決してどこにでもあるとはいえません。
自分で採った虫は宝物です。それを飼って観察することにより、虫や自然をいとおしむ心が生まれ育つのではないでしょうか。

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