北本市史 通史編 自然

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第3章 北本の土壌

4 谷地田の土壌

図24 谷地田の土壊断面(高尾宮岡)

(『市史自然』P53より引用)

台地の内部や崖線ぞいに、小規模な谷があり谷地田とよばれる水田が昔から分布していた(図24)。台地からの水の供給が多いため地下水位が高く、すべての層位が還元(かんげん)下の環境にあると推定される。しかし谷は荒川沖積低地に開かれ傾斜しているため、地下水は停滞せず常に流下している。そのため地下水位が高いにもかかわらず還元下で生成されるグライ層は認められない。これは谷地田水田土壌の特徴のーつといえよう。谷地田水田土壌は周辺台地から流亡してくる火山灰が谷に集積したもので、暗灰ないし黒灰を呈し、下部には植物遣体の分解が進んだ黒泥土層がみられる。
谷地田は、規模が小さく常に台地より水が供給され、一方洪水のような災害の影響も少なく安定した稲作の場所として古くから利用されてきた。ところが最近、市内の谷地田は休耕田が多くなり、その多くは産業廃棄物の捨て場所として利用されている。社会情勢の反映とはいえ、昔から食糧生産の場糧として大切に利用されてきた谷地田の機能が変質しつつあることは極めて残念なことといえよう。

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