北本市史 通史編 自然

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第3章 北本の土壌

5 水田の土壌

大宮台地の西側に荒川、東側には元荒川が流れ沖積低地がひろがる。低地には河川氾濫(かせんはんらん)堆積物に由来する水田土壌が広く分布する。ここでは荒川左岸の耕地整理された水田土壌の例を図25に示そう。
土壌層位は耕作土、スキ床層および心土 (鉄集積層およびマンガン集積層)からなる。これは「荒おこし」「水はり」「代(しろ)かき」「中耕」「落水」という作業を通じて、しだいに特異な土壌断面がつくられた結果である。耕作土は水はりのため、酸素に乏しく還元的(かんげんてき)な環境となり二価の鉄へ変化し青灰色を呈する。根のはる土壌が還元下でも、稲の根は地上部より酸素を吸収するため酸素欠乏とはならない。スキ床は長年耕作していくうちに上層より流れてくる粘土粒子がすきまに沈積して固まり、水をはったとき水もれを防ぐ役目をする。

図25 水田の土壌断面(高尾下沼)

(『市史自然』P53より引用)

心土は鉄斑紋(はんもん)とマンガン斑紋集積層で、夏の灌水期に還元した鉄・マンガンが心土で酸化、沈積して斑紋が形成され、冬期の落水(地下水位はー メ ートル以下)で斑紋は固定される。他方、冬期中でも落水せず一年を通じて地下水位が高い水田の心土は、全層還元下となり、青灰色したグライ層になりやすい。この種の水田土壌は耕地整理されていない水田地帯に多い。
市域の水田は、かなり以前に耕地整理が実施され、同時に灌漑・排水施設が完備された。したがってその水田土壌の多くは、夏期の水はりや代かき、冬期の落水といった作業を通じて、その影響が土壌断面に反映された結果生成されたといえる。

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