北本市史 通史編 自然

全般 >> 北本市史 >> 通史編 >> 自然

第4章 北本の気候

第4節 天気俚諺

4 「日常生活に関する天気俚諺」一三二例

「日常生活に関する天気俚諺」は、台所、醤油(しょうゆ)びん、ふんどし、障子(しょうじ)の動き、刻(きざ)みたばこ、便所の臭(にお)い、かまど、あかぎれ、蚊帳(かや)、下駄(げた)など、現代では死語になりつつあるものもあって、当時の生活のようすがうかがわれる。現代的な生活様式ではこのような天気予報もし難(がた)くなってゆくであろう。
最も多く収集された天気俚諺は「家の土台石が濡れていると雨」(三一例)で、これについては前述した。次に多いのは「神経痛が痛むと天気は下り坂」(一六例)である。病気の人は天気の変化に敏感であり、悪天を予知するとは日常よく言われることである。湿度や気温、気圧の変化などは常に恒常性を保とうとする生物体にとって一種のストレス刺激(しげき)を与えることになる。この刺激は副腎(ふくじん)や脳下垂体(のうかすいたい)にはたらいてホルモンを分泌(ぶんぴつ)させ 頭痛・神経痛・古傷の痛みなどを起こすといわれている。
また「列車の音が東からよく聞こえると天気は下り坂」という天気俚諺も、よく似た内容の俚諺が各地で言われている。気温と音速は比例するから、天気が良いと地表が高温となり、気温の減率が大きくなる。すると無音域(むおんいき)が小さくなって音が通りにくくなる。反対に雲の多い時は遠くまで音がよく伝わる。東の列車の音がよく聞こえるとは、頭上から東方に雲が存在していることになる。低気圧や台風の勢力圏内に入ると、南ないし南東方向から湿った風が吹き込んで雲を形成するし、その風によって、風上の列車の音がよく聞こえるということにもなるだろう。
家の土台石が濡(ぬ)れていると近いうちに雨がふる
塩が湿(しめ)ってくると天気は下り坂
コンブが湿ると天気は下り坂
醬油ビンが汗をかくと大雨になる
ふんどしが湿っっぼいから明日は雨
洗濯物(せんたくもの)の乾きがしとっぼいから雨が近い
障子の動きが悪いから天気は悪くなる
刻(きざ)み煙草(たばこ)の火がもたないから明日は雨
便所の臭気が強いと天気が変わる
列車の音が東からよく聞えると天気は下り坂
鐘の音がよく聞えると雨になる
かまどの煙が家にこもると天気は下り坂
鉄ビンやなべのしりに火の粉がつくと風になる
雷が鳴り、ひょうが降ったら節分の残りの豆を庭にまくと早くやむ
朝ごはんがこんもりよくたけると天気がよくなる
鍋ものを煮る時、沸湯(にえゆ)が中央から始まると晴
手足のあかぎれ(ひび)が痛いときは、翌日西風となる
神経痛が痛むと天気は下り坂
腹が痛いと大霜がある
お風呂に入って手のひらにしわがよると明日は風
子供がおおはしゃぎをすると翌日は雨
下駄を投げて表が出れ.は晴、裏が出たら雨
雷の時は蚊帳(かや)をつれ
砂浜を歩いて足が砂に入ったら雨になる
櫛(くし)が通りにくい日は天気が崩(くず)れる
親の罰と、こそこそ雨は気が付かないうちに当る
四十浮気と七ツ雨は止みそうで止まない
冬至(とうじ)にカボチャを食べると夏病(なつや)みしない
正月の門松に雪が降りかかると、その年七度降る
初午(はつうま)の早い年は火事が多い
夏の東風は凶年

<< 前のページに戻る