北本市史 通史編 自然

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第5章 北本の水文

第1節 地表水

2 水質

平成二年(ー九九〇)夏と平成三年(ー九九一)冬に、数か所で水温・水質の測定を実施した(図38・表5)。河川などの水温は、それぞれの時期の気温とほぼ平衡(へいこう)する傾向があり、夏季では摂氏(せっし)ニ二度~ニ七度、冬季で四~九度の値(あたい)となっている(H地点の高い冬の水温は人為的な排水の影響と思われる)。水素イオン濃度 (PH) は全般的に中性~アルカリ性の傾向が認められる。電気伝導度(EC)、塩素イオン濃度 (C1-) は荒川で低く、小河川・水路で高い値(人為的汚染(じんいてきおせん)がより進んでいる)を示す傾向が認められる。
表5 河川・水路の水質
地 点 W.T. ℃pH RpH EC 
18℃ 
μs/cm 
Cl⁻
ppm 
DO 備 考 
ppm 
北袋神社横水路 22.1 6.67.6 283.7 50 2.4 6.0 
7.3 6.8— 301.1 50 — 6.1 
旧荒川・蓮沼 27.2 7.2   8.2 330.5 24 1.8 6.8 気温26.7℃ 
閉鎖水
気温5.6℃ 
4.7 7.6— 357.0 27 — 7.2 
荒川・高尾橋 24.5 7.88.0 201.8 23 3.711.0 
4.2 7.4— 177.4 22 —  9.3 
荒川 24.7 7.67.8 234.7 22 2.68.5 
4.6 7.4一 182.6 21 — 8.3 
旧荒川 — — — — — — — 
5.9 7.2— 283.2 40 — 8.4 
荒川支川・市野川 26.7 7.28.0 355.2 46 3.910.7 
— — — — — — — 
赤堀川 (市東部地域) 26.3 6.87.6 333.6 49 3.28.3 
8.5 7.0— 346.3 63 —  5.4 
谷田用水 (市東部地域) 26.3 7.2 7.8 356.1 48 3.19.4 
13.6 7.6 — 393.9 39 — 6.5 

(各地点の上段は1990年8月28日~30日調査、下段は1991年2月16日~18日調査)


北本市(環境整備課)ではー九七〇年代中頃からBOD調査を実施しており、その内数地点(図38)での経年変化をグラフに示した(図39-a・39-b)。
BODとは、生物化学的酸素要求量で、水の中の有機物を酸化・分解するのに、好気性微生物(こうきせいびせいぶつ)がどれだけ酸素を必要とするか、ということで、汚染(おせん)された水ほど値(㎎/ℓ)が大きくなる。因みに平成二年度(平均)の荒川の御成橋(おなりばし)地点ではー・五㎎/ℓ、笹目橋地点で五・〇㎎/ℓであり、伝右川(でんうがわ)下流(綾瀬川(あやせがわ)の支流)では県ワースト1の八八㎎/ℓであった(県調査)。
なお、汚染に強いコイやフナ(水産用)の棲息(せいそく)には五㎎/ℓ以下、サケやアユ(水産用)などの棲息ならびに水道源水には三㎎/ℓ以下の値が必要である。
勝林水路(江川)の下流の水質測定地点20では下水道供用区域外の宅地化などにより、水質の改善が見られない。

表38 河川・水路の水質測定地点

(北本市資料より作成)

谷田用水路の1や7では一九八〇年代前半からの下水道の普及により値が小さくなってきた。
梅沢水路は9の最上流部では釣堀の影響のせいか高い値の傾向を示すが、下流の12・13ともー九八〇年代前半の高い値からしだいに小さい値(ー 〇㎎/ℓ)になる傾向にあり、ー九八〇年代前半から始まった下水道の普及の効果がはっきりとあらわれている。
BODの値は夏季に低く、冬季に高い傾向があるが、これは夏季の降雨や地下水および一部灌漑用水(かんがいようすい)の供給などにより希釈(きしゃく)されたものであろう。環境基準値(準用)の五㎎/ℓをほとんどの地点・時期で超えており、ー〇㎎/ℓ以上になると悪臭を放つようになる。

図39-a 河川・水路のBOD経年変化

(北本市資料より作成)

以上のごとく上流域の宅地化などによる農業用水の汚染が進んだために水田への利用ができなくなり、陸田同様水田の近くにポンプを設置し、地下水をくみあげて利用するようになった所(東部)もある。
 市域の下水道は流域下水道(荒川左岸北部・五市一町の下水を暗渠(あんきょ)で集め、桶川市の終末処理場で元荒川へ放流している)で、家庭のし尿と雑排水および工場などの廃水を受け入れ、雨水は流れ込まない分流式である(図40)。
水道源水の限界はBOD値三㎎/ℓである。しかし、終末処理場の排水基準は二〇㎎/ℓであるが、これは放流先の大量の河川水による希釈(きしゃく)や自然浄化を期待してのものである。

図39ーb 河川・水路のBOD経年劣化

(北本市資料より作成)

小河川・水路や道路の側溝(そっこう)は、下水道の供用区域ではし尿や家庭雑排水は下水道へ流れるため、雨水(一部地下水)のみが流れることになり、水質汚染がだいぶ改善されてきた。
ところが未供用区域では、家庭で単独浄化槽(じょうかそう)(し尿のみ処理)を設置した場合、それの処理能力が低いため排水基準があまく (BOD値九〇㎎/ℓ)、無処理の家庭雑排水も流入することになり、汚染・悪臭が目立つ所がみられる。

図40 流域下水道供用区域 (1992年 4月現在)

(北本市資料より作成)

また、治水のためのコンクリート護岸化、河床の掘り下げ・拡幅(かくふく)、事故防止のためのフェンスさらには暗渠化(あんきょか)などにより、かっての小川(魚釣りや散策などの憩(いこ)いの場)の面影はなくなり、無機的な人工河川化し、住民と隔絶(かくぜつ)したものとなってしまった。ある程度の前述の工事はやむをえないにしろ、小魚や水生生物が棲息(せいそく)するなどバランスのとれた生態系をもった親水性のある川・やすらぎのある川、そして土壌や礫などを通しての微生物による浄化、植物による浄化ができる川を呼びもどしたいものである。
それには、下水道の未供用区域では合併浄化槽(家庭のし尿と雜排水を併せて処理をする。排水の水質基準BOD値ニ〇㎎/ℓ)を設置することが望ましい。また下水道があるなしにかかわらず、各戸で終末処理場や浄化槽の微生物の働きが衰えないよう、塩酸や毒物を流さないこと。またBOD値の高い米のとぎ汁(三〇〇〇㎎/ℓ) ・みそ汁(三万五〇〇〇㎎/ℓ)や酒などは庭があれば土へもどし、食器の油は紙でふき取って洗うなどして洗剤を極力使わないことが肝要(かんよう)である。
また、急激な河川の流量のピークを少しでもおさえる(内水害防止)ために、豪雨時には湯舟の水をぬかないことや、浸透性雨水桝(しんとうせいうすいます)を設けて、平常から地下水涵養(かんよう)をはかるなど住民一人一人の心掛けも大切である。

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