北本市史 通史編 自然

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第5章 北本の水文

第2節 地下水

1 地下水の存在状況

市域における地下水の在り方は、まず地下水面等高線図から、その概要を知ることができる。図41は各家庭の浅井戸の水位から地下水面高度を求め、ニメートル毎に画した不圧地下水面等高線である。この図には夏季と冬季の異なる時期の不圧地下水面を示してある。不圧地下水面等髙線の配列は一般に地表面のかたちと類似(るいじ)した傾向にある。すなわち、不圧地下水面は市西部の高い台地地域で同様に高く (二八~二三メートル)、東部(二四~一四メートル)や南部の低地にのぞむところ(ニー~一八メートル)で低くなる。また、JR高崎線・中山道沿いにはやや高い不圧地下水面が尾根状に存在したり、市中央の西高尾・本町地区(江川水系上流)では高低差を示さないところがみられ、さらに、江川水系の下流(公団北本団地付近)に沿っては不圧地下水面に谷形が認められる。地下水の流動方向は、これらの不圧地下水面等高線の配列にしたがって、これに直角の方向に流動する。すなわち、市西部の台地のそれは、東側の江川水系や南側で荒川低地方向へ流動している。市中央から東部の台地地域では、鴻巣市側から流れてきた地下水の大半が市域の北東~南東方向へ流動し、その一部が江川方向に向かつて流動していることが知られる。

図41 夏季と冬季の不圧地下水面等高線(単位 : m)

(『市史自然P120・121より作成)

また、市西部の台地地域には顕著(けんちょ)な侵食谷(しんしょくだに)が荒川方向に向かって発達するが、その谷頭(こくとう)や谷壁斜面の一部で湧水(ゆうすい)が認められることから、不圧地下水面は台地と侵食谷・荒川低地とで不連続関係にある。しかし、市中央~東部にかけての浅い侵食谷では台地の地下水と連続している傾向が多いようにみられる。この関係は近年の地下水位の低下に伴い生じたものと考えられる。

図42 不圧地下水位の変化

(長沼・早船1991・1992調査結果より作成) 注)内田井戸:東部台地、標高16.4m   横田井戸:西部台地、標高28.4m

一方、不圧地下水の水位変化を二か所での観測結果からみると、図42に示すごとくである。その年変化の傾向は三月中旬に最低水位を記録した後、三月下旬から五月にかけてゆっくり水位が上昇し、その後水位は梅雨期まで低下傾向を示している。六月中旬から十月にかけての期間は梅雨・台風・秋霖(しゅうりん)などの降水の影響を受け、総体的に水位の上昇がみられる。この間、地下水位は梅雨期直前まで若干(じゃっかん)低下するが、この時期は灌漑(かんがい)用として一斉に地下水が揚水(ようすい)されるためと考えられる。また、その後強雨の影響を受けて一時的に急上昇したりして、十月に最高水位を記録し、以後翌年の三月まではほぼー定の割合で逓減(ていげん)していく。平成三年(一九九一)の降水量は一五六四ミリメートル(鴻巣観測所)で、年平均降水量より三〇〇ミリメートル以上多かった。しかし、地下水位にみられる年変化の傾向は経年的なそれにおいても同様のパターンが繰り返され、最高・最低水位は降水の応答に対応しながら豊水・渇水期(かっすいき)より若干遅れるかたちで出現している。
この地域の不圧地下水位は経年的にみると低下を示す傾向がまだ現れていない。平成三年における地下水位の最大振幅は内田政之助家井戸と横田長次家井戸で、それぞれ三メートル、五メートル以上となっている。

図43 被圧地下水位の経年変化

(埼玉県資料より作成)

不圧地下水の水温と若干の水質状況についてみると、水温は夏季の場合に大略摂氏一四~一六度の値を示し、冬季のそれでは夏季より一~二度低い値の傾向を示している。水素イオン濃度 (PH) は大略五・八~六・〇の微酸性の値を示し、季節的な変化はほとんどみられない。電気伝導度(EC)の値は一〇〇~三〇〇㎎/ℓの範囲にある場合が多く、極端に高い値を示すところはほとんどみられない。塩素イオン濃度(C1-) は大半一〇〇㎎/ℓ未満である。これらの水質状況からみて、市域の不圧地下水は現在のところあまり汚染されていないものと考えられる。しかし、飲料水としては充分適合する地下水といえない現状にある。
被圧地下水は、その圧力水頭分布状況により市の北西~西方向から流れてきて、南東方向の中川低地に沿って南流している。被圧地下水の圧力水頭は揚水燈に対応して年々低下している。図43はその水位変化を経年的に示したものであるが、特に昭和五十七年(一九八二)以降の水位低下は顕著で、さらに水位の月別振幅は小さくなる傾向を示している。これは被圧地下水への涵養を上回るような揚水に伴う結果と推定することができる。
次に被圧地下水の水温・水質状況について、桶川北本水道企業団の水源井(地下一ニ四~三一一メートル間の帯水層)における数年の分析結果からみると、大略以下のようである。水温は摂氏二一度前後で、不圧地下水のそれより数度高い値を示している。水素イオン濃度 (PH) は七・四~七・八のアルカリ性で、不圧地下水の微酸性を示す値とは異なる状況にある。
塩素イオン濃度(Cl)は石戸浄水場関係の水源井で七㎎/ℓ以下、中丸浄水場関係のそれで一七~四〇㎎/ℓの範囲にある。これと類似した傾向はカルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)の硬度にも認められ、前者で四四~五三㎎/ℓ、後者で高く五八~八三㎎/ℓである。過マンガン酸カリ(KMn04)消費量は五㎎/ℓ前後、鉄(Fe) は〇・〇五~〇・八一㎎/ℓの範囲にある。

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