北本市史 通史編 自然

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第5章 北本の水文

第2節 地下水

2 地下水の利用状況

図44 地下水の用途・年次別揚水量

(埼玉県資料より作成)

市域における最近の水道用・建築物用・工業用の三用途に利用されている地下水の揚水量をみると、図44に示すごとくである。地下水の一日当たりの平均揚水量は、三用途の合計でー万三〇〇〇~ー万八五〇〇立方メートル、用途別には水道用のそれが最も多く、全揚水量の七〇~八〇パーセントを占め、その割合は年々増加している。また、市域に隣接する鴻巣市・川島町・吉見町などでは水道用としての地下水利用が最も多い反面、桶川市・上尾市では工業用としてのそれが最も多い使用水量になつている。

図45 農業用井戸の存在と利用状況

(埼玉県資料より作成)

現在、市域の上水道は桶川北本水道企業団からの給水に依っている。その水源は当初すべて地下水であったが、昭和五十四年度からは埼玉県広域第二水道事業に伴う受水が決定し、水源は地下水から地下水と県水へ変更された。現在、地下水の揚水量は水道配水量の三〇~四〇パーセントになっている。建築物用の地下水揚水量は昭和五十八年・五十九年(ー九八三・ ー九八四)には日平均三〇〇〇立方メートル以上であったが、昭和六十年(ー九八五)以降は二〇〇〇立方メートルに減少している。工業用のそれは、市内に水を多量に使用する大口企業が存在しないこともあって、現在では一三〇〇立方メートル前後で推移している。

写真2 陸田と農業用井戸ポンプ 中丸

一方、市域における地下水利用の特色としては農業用のそれが比較的多量であることを挙げることができる。農業用の地下水利用は、陸田の発達とその分布にある。市域における昭和六十年九月を対象とした調査資料(図45)によると、農業用井戸数は浅井戸(深度二九メートル以浅)および深井戸(深度三〇メートル以深)で、それぞれ五五八井、九二井である。
井戸の設置年次は、浅井戸の約七〇パーセントがー九六〇年代から一九七〇年代にかけてで、深井戸の約六〇パーセントは昭和五十年(ー九七五)以降である。それらの井戸の分布状況をみると、浅井戸はJR高崎線の東側地域に総数の六八パーセントが集中している。また、総数のニーパーセントに当たるーー六井は市南東部の中丸地区に集中し、次いで宮内地区、深井地区、朝日地区の順となり、これら四地区をあわせると総数の五七パーセントの三一五井となる。深井戸のそれは、高尾・下石戸上・下石戸下地区の西側地域に多い。深井戸の大半は深度ー〇〇メートル以浅からの揚水である。農業用地下水の揚水量は日平均一〇~ーニ〇〇立方メートルの範囲にある。
これらのうち日平均二〇〇立方メ1トル以上の揚水が認められる地域は中丸地区にあるが、この地区は市域の水田・陸田分布の中心的な地域を形成している。農業用地下水の年間利用日数は七ー~ーニ〇日間の場合に集中しており、これは井戸総数の七八パーセントに当たる。利用時期は当然ながら灌漑期に集中するが、その水量もこの時期に多くみられる傾向がある。市域には周知のように公共の上水道が普及している。しかし、一般家庭の浅井戸は現在も放棄(ほうき)されることなく、かなりの頻度で利用されている。ただし日常使用されている浅井戸数は市内で四〇〇井以上あると推定できるが、その利用水最は不明である。

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