北本市史 通史編 自然

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第6章 北本の生物

第5節 優れた自然

3 宮岡氷川神社付近

氷川神社付近に雑木林と湿地がある。周囲は開析谷が発達し、谷頭部より湧き水が出ている。湧き水は小川となって雑木林の周辺を囲むようにして流れている。平成元年(一九八九)九月十四日の調査では、小川の水温は一八・五度、水量は毎秒一五・一リットルで、年間を通してほとんど水温、水量ともに変化がない。川底は砂と直径五ミリメ—トルぐらいの泥粒からなり、小さな淵に枯葉が重なっている。

写真39 宮岡の谷津

水生昆虫ではオニヤンマ、フタトゲオナシカワゲラ、ヤスマツアメンボ、マメゲンゴロウ、ホンシュウオオイチモンジシマゲンゴロウが生息する。
オニヤンマは大型のトンボで、水のきれいな砂泥底に生息し、個体数は多い。
フタトゲオナシカワゲラは湧き水口から雑木林周辺の小川の砂泥上に多数生息する。本種は家庭雑排水の流入がなく、水質環境がよい冷水に生息する。平野部の小川にオナシカワゲラ科が生息するのは珍しいことである。
ヤスマツアメンボは雑木林周辺の小川にできた暗い水溜りに生息する。
マメゲンゴロウは市内の河川や池沼に普通に生息する。特に、氷川神社周辺の小川には多い。幼虫は冬から春にかけて成長し、春に成虫となる。六、七月は成虫が多く、集団で生活している。
ホンシュウオオイチモンジシマゲンゴロウは雑木林周辺の小川で川幅が約三〇センチメートルから約五〇センチメ-トルで、一ミリメーートルから五ミリメーートルの泥粒が多いところに生息する。
甲殻類(こうかくるい)ではアゴトゲヨコエビが湧き水口から雑木林の周辺を流れる小川に生息する。関東地方ではすでに知られていたが、埼玉県では初記録のものである。サワガニは昭和十年代までは多く生息していたようであるが、今はわずかに確認される程度である。
氷川神社付近には雑木林、湿地、湧き水などの諸条件が具備している。小川には家庭雑排水が入らず、水はきれいで狭適温性の動物が生息するのに最適のところである。また、湧き水による湿地や雑木林によって冷暗所が形成され、特異な環境のみに生息する水生動物を住みやすくしている。

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