北本市史 通史編 自然

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第6章 北本の生物

第5節 優れた自然

6 保存樹木

北本市内には保存すべき樹木が多い。国指定の天然記念物石戸カバザクラをはじめ、多くの植物文化財は市内西部地区に分布する。
現在、市内に成育する植物で文化財として指定を受けているものは、国指定の天然記念物一件、県指定の天然記念物一件、市指定の天然記念物三件がある。そのほか現在指定を受けていないが植物文化財として重要であろうと考えられるものや、今後保存する必要があると思われる植物を選択すると以下のとおりである。

写真42 カバザクラ

写真43 ムクロジ

カバザクラ(石戸宿 東光寺(とうこうじ))
国指定の天然記念物(大正十一年十月十二日)
サクラでは日本五大巨木の一つに数えられた往時の巨大な古株があるが、現在のものはその株吹きである。樹齢七〇〇年と推定される。エドヒガンザクラの一品種である。
地上三五センチメートルより幹は二分し、双幹となって西側の幹は枯れている。地上三・五メートルで枝が切断されている。幹は傾き、四本の支柱が支えている。根元周辺の土壌状態は良好である。
ムクロジ(本宿多聞寺(たもんじ))
県指定の天然記念物(昭和十六年二月二十一日)
寺の境内にあって周囲は墓地である。昭和六十三年(一九八八)十一月に樹冠部(じゅかんぶ)が折れ、記録では二七メートルの樹髙だが、現在はそれより低くなっている。樹幹内には空洞部があり、昭和六十一年(一九八六)にはコノハズクが営巣していた。推定樹齢二〇〇年。
エドヒガンザクラ(高尾)

写真44 エドヒガンザクラ

市指定の天然記念物(昭和五十三年三月十五日)
周辺はモウソウチクにコナラが若干混在する竹林で、人の踏跡のない東向き斜面である。成育環境はよいが、急斜面のため樹形は非対称形となっている。土壌、樹勢とも良好である。
厶クノキ(石戸宿天神社)
市指定の天然記念物(昭和五十三年三月十五日)
台地の縁に立つ神社の境内にある。地上五メートルより双幹となって、 そのうち一方が枯れている。樹冠頂上部が枯れているため、樹高は記録の五二メートルより低くなっている。周囲の環境は良好である。推定樹齢六〇年以上。
ドウダンツツジ(石戸宿 鈴木周治方)
市指定の天然記念物(昭和五十九年三月)
個人の庭内の庭木。周囲の環境、樹勢ともに良好である。

エノキ(石戸宿)

写真45 エノキ

指定なし
地上三メートルまで太い幹である。しかし樹幹の中は空洞になっており、焼け焦げたあとや腐りがはいっている。樹幹のうち生きている部分は五分の一くらいであり、その上部は枝が密生してからんでいる。周囲は畑であり、交差点の角にあって芭蕉の句碑が立っている。樹勢はあまりよくない。平成二年(一九九〇)市教育委員会により、保存対策が行なわれた。
シダレザクラ(石戸宿)
指定なし
谷地田に面した西向きの斜面上にある。マダケの竹林の中にあるが樹勢はよい。樹幹は地上七〇センチメートルより二分してその一方は枯れている。
モチノキ(石戸宿松島昇方)
指定なし
地上高一メートルで幹が六本に分かれている。根は大きく張り出し、周辺の土壊が侵食されたようすである。荒川に近い畑の中にあり、土壌の状態もよく樹勢も良好である。
エドヒガンザクラ(高尾 阿弥陀堂)
指定なし
寺の墓地内の崖上にあり、成育環境はよくない。主幹の頂上部は枯れており、そこから空洞化が始まっている。北側の枝の多くは枯れており、切り落とされている。北半分側の樹勢は悪い。
ソメイヨシノ (石戸宿城ケ谷堤)
指定なし
堤を中心に樹齢数十年のソメイヨシノ (樹高七~八メートル)が五三本両側に並んでいる。四月上旬には桜並木のトンネルができ、花見の市民でにぎわいをみせている。樹勢も良好である。
クスノキ(本町真福寺)
指定なし
寺の境内にあり成育環境はよい。山門内の対のうちの一本。樹勢はよく、樹形も安定して良い形である。
参考文献
永野巌『埼玉の植生』埼玉県文化財保護協会(一九七三)
日本野鳥の会埼玉県支部『埼玉県バードサンクチュアリ基礎調査報告書』(一九八四)埼玉県
文化庁『植生図・主要動植物地図11、埼玉県』(一九七三)国土地理協会
宮脇昭『原色科学大事典3 植物』(一九六七)学習研究社

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