北本市史 通史編 原始
第1章 火山灰の降る中で
第1節 北袋の崖面から
九州から飛んできた火山灰場所の異なる赤土の崖で、それぞれの層を比較したり、時間的な新旧を判断することはとても難しい。たとえ火山灰を供給する火山が同じでも、特徴となる層(鍵層)(かぎそう)がない場合も同様である。ところが、広い範囲に降下し、しかもその降下した年代がわかっている火山灰をはさんでいれば、そうした比較が可能となる。このような条件を充たした火山灰を広域火山灰という。
写真2 ATの火山ガラス 行田市
中の山古墳(埼玉県立さきたま資料館提供)
広域火山灰には、このほかに御岳(おんたけ)第一軽石層(Pm—1)・東京軽石層(TP) ・アカホヤ火山灰(Ah)などが知られ、最近では洪積世最終末ごろの立川ローム最上部のガラス質火山灰(UG)が確認されている。これらを活用することで、遺跡間の層位や寒冷植物を含む層位などの対比研究が可能となり、考古学のみならず火山学・年代学などにも大きな進歩をもたらした。まさに時を伝える鍵層といえるだろう。