北本市史 通史編 原始

全般 >> 北本市史 >> 通史編 >> 原始

第2章 豊かな自然と共に

第5節 生活を豊かにした道具

いろいろな素材を生かした道具づくり
縄文時代の遺跡を発掘していると、実に様ざまな物が出てくる。何に使ったのか分からないものも多くある。当時使われていたものがすべて残っているわけではない。特に有機質の物は普通の状態の遣跡では残らない。そうした条件を差し引いたとしても、利器を中心とした旧石器時代と比べると、生活がはるかに複雑化していることが分かる。
道具を素材で分類すると、石製品をはじめ土製品、木製品、骨製品、角製品、貝殻製品がある。敷物や縄・布など道具という枠組みになじまない物も含めれば、竹製品、植物繊維製品もあり、入手できるすべての素材を活用している。網の錘(おもり)は、石製と土製があり、機能が充足できれば素材はどちらでもよい例であり、玦状耳飾(けつじょうみみかざり)りや腕飾具の例では、素材が入手できないときは、本来石製品であるべき物を、土製品で代用することもあった。あるいは網をつくったり修理するときに使う骨製の網針(あばり)が宮城県の沼津貝塚から出土している。最近でこそ網針はプラスティック製になったが、しばらく前までは竹製であった。おそらく縄文時代も竹製が普通であり、たまたま骨でつくられたので今日まで残り、縄文時代に網針があったことが分かる例である。また、現代の網針とまったく同じ形態であり、縄文時代にすでに網針は素材以外に改良すべき点が無いまでに完成していたのである。縄文時代だからすべてが原始的というものでもない。中には現代の物と遜色(そんしょく)の無い物もあるのだ。
様ざまな素材を利用しているし、入手できないときは代用素材を見つけ出しているが、基本的には素材は限定しており、道具の機能を最もよく発揮(はっき)できるよう道具によって素材を選定している。

<< 前のページに戻る