第3章 米作り、そして戦争の始まり
第6節 祭と墓
農耕のマツリ
図42 マツリの道具
最近では、弥生のマツリに鳥が重要な意味をもつことが分かってきた。
人生の節目ごとに行われる通過儀礼(つうかぎれい)や一年のサイクルをもつ年中行事、 弥生時代にも様々な儀式や マツリが行われていたことが、抜歯(ばっし)や占卜(せんぼく)そして銅鐸(どうたく)や鳥形木製祭具(とりがたもくせいさいぐ)などから窺(うかが)える。もちろん形として残らない儀礼の方が多かったであろうから、弥生人たちのマツリの全てを明らかにすることは難しいが、抜歯などの通過儀礼を別にすれば、祭祀の多くは、生活のうちでもっとも重要な農作物の豊饒(ほうじょう)を祈念する観念と直接・間接に結び付いていたものであったことは疑いない。ただし、銅鐸や銅剣・矛(ほこ)などの青銅器を使用したマツリが西日本で発展したにもかかわらず、東日本では青銅器のマツリが行われた様子はほとんどみられないことから、マツリの形には地域によって違いがあったことがわかる。残念ながら市内やその周辺で、弥生時代のマツリの様子を示す資料は見つかっていないが、予祝(よしゅく)(豊作を祈る)の行事や虫追い、収穫祭など今日でも市内の農家に残るマツリの原型がこの時代から始まっていたはずである。